第22章 終わりと始まり
これで、実は飛雄と・・・なんて紡ちゃんの口から聞いたら・・・
オレ、この場に倒れる所だった。
でも、ホントにフリーだとしたら・・・チャンス到来?!
アピールは恋でもバレーでも大事だよね!
オレは紡ちゃんの肩を抱き寄せる様に腕を回し、そっと耳元で囁いた。
「オレ、立候補しちゃうよ?いいよね?」
『知りません。とにかくそういうのは今はいいんです・・・もぅ・・・置いてかれるのは・・・嫌だから・・・』
「・・・!」
澤「・・・!」
紡ちゃんの言葉に、オレは胸を刺されるような痛みを覚えた。
いま、置いてかれるのは嫌だから・・・って、言ったよね?
それってやっぱり、岩ちゃんの事だよね?
じゃあまだ紡ちゃんは・・・岩ちゃんの事、忘れられてないんだ・・・
何を言ったらいいのか、言葉が出て来ない。
それはこの彼も同じようで。
・・・・・・同じ、ようで?
澤村君は紡ちゃんと岩ちゃんとの間に何があったのか、知ってるのか?!
どんな経緯で、どんな状況で、誰から知った?!
頭の中がぐちゃぐちゃで、思考回路が急停止する。
オレ達が2人とも黙り込んだのを見て、紡ちゃんが顔色を変えた。
『ごめんなさい。今のはナシで・・・及川先輩、私達は先を急いでるので失礼します。澤村先輩、行きましょう・・・』
「あ、ちょっと紡ちゃん!」
早口で言って澤村君の腕を引き、紡ちゃんはあっという間にレジに並んでしまった。
追いかけたい・・・
なのに、なぜかオレの足が前に進もうとしない。
会計の順番が来ても、紡ちゃんはオレを振り返ろうとはしなかった。
せめて振り返って視線が合ってくれたら・・・
もう少し話をするキッカケが出来そうなのに。
紡ちゃん、振り返ってくれ。
1度でいいから・・・少しだけでもいいから・・・
そう念じて見つめていても、紡ちゃんが振り返ることはなく。
やがて会計も袋詰めも終わってしまい、荷物を引っ掴み、澤村君を押し出すように店から出て行ってしまった。
岩ちゃん・・・まだ、紡ちゃんの事、大事に思ってる?
もう、忘れちゃった?
・・・それとも、忘れたフリをしてるの?
ここにはいない岩ちゃんに、オレはそう、問いかけていた・・・