第22章 終わりと始まり
紡ちゃん、もしかしてまだ・・・岩ちゃんとの事の傷が癒えてない?
あれからいくつ季節が過ぎた?
そんなに岩ちゃんの事、忘れられない?
それとも、別の理由があるの?
聞きたいことが浮いては沈み、言葉に出来ないもどかしさを感じた。
« あ、城戸さんゴメン!待たせた・・・って・・・あれ・・・? »
誰かの声に体紡ちゃんのがピクリと動く。
それはオレも同じで、紡ちゃんの視線を追ってゆっくりと振り返る。
« ・・・あ・・・ »
「君は確か・・・烏野バレー部の・・・」
オレはこの状況が上手く消化出来ず、お互いに視線を合わせたままでいた。
その人物は紡ちゃんの肩にオレが手を置いているのを見て、スッと動いたかと思うと紡ちゃんの隣に立った。
« えっと・・・烏野の澤村です。何かありました? »
先に名乗られ、オレはそれに反応して紡ちゃんから手を離した。
「青城の及川です・・・そっか、そういう事か」
紡ちゃんの隣に、当たり前のように立つ男は、烏野バレー部の部員。
試合会場で何度か見かけた事はある。
残念ながら、試合で当たった事はないけど。
「紡ちゃん、バレー部のマネージャー始めたんだ?」
澤村と名乗るヤツから視線を外せないまま聞くと、紡ちゃんは違うと答えた。
澤「彼女はホントにお手伝いをしてくれてるだけですよ?今のところは、ですけど。経緯は話せませんが、正式な部員ではなくても大事な人材です」
へぇ・・・大事な人材、ねぇ。
それなら、どうして手伝いだけに留まらせてるんだよ。
「澤村君、だっけ?君は紡ちゃんがずっとバレーをやって来て、どれだけ一生懸命だったかは知ってるの?」
オレが言うと、紡ちゃんに1度視線を移してからこっちを見た。
澤「もちろん知ってます」
「なら、どうして手伝いだけで終わらせてる?紡ちゃん位の頑張りだったら、それこそ女子バレー部にだって歓迎されてもおかしくない。それに気づかないとか?」
我ながら、凄く嫌な言い方をしてるとは思う。
澤「俺もそう思います。だけど、本人の気持ちや、そうする以上に大事な物があるのが分かりませんか?」
まっすぐオレを見据え、堂々とした姿勢で返されると、まるでオレが悪いかのような気にさえさせられる。
オレはフウっと息を吐き、2人の姿を見た。
大事なもの・・・か。