第22章 終わりと始まり
そう思って、迷いなく店の中に入った。
目的の物が並ぶ棚に行き着くまでに、色々なPOPがオレを誘惑してくる。
あ、これオレと岩ちゃんが好きなお菓子じゃん?
お1人様3点まで・・・買おう!
で、1個だけ岩ちゃんにあげよ。
あ、これも安いし、これも、そっちも!
・・・なんか得した気分~!
あっという間にカゴはお菓子で半分埋まり、まだ会計もしてないのにホクホクとしたいい気分になっていた。
後は粉末ドリンク買ったら戻ろうかな。
そう思って通路の角を曲がると、小さな女の子が精一杯の背伸びをして棚の上に手を伸ばしているのが目に入る。
あんな所に手を伸ばさなくても、棚にあるだろうに・・・
そう思いつつ、その子のカゴを見ると既に棚から掻き出したか?ってくらい粉末ドリンクの箱が入っていた。
なるほど、足りなくて探したら・・・ってやつか。
それにしても、届かないなら店員呼ぶとか考えないのかな?
何となくその子の後ろ姿が紡ちゃんと重なって見えて、足を止めたまま傍観する。
フフッ、紡ちゃんもあんな風に背伸びして物を取ったりとかしてたなぁ・・・
そんで岩ちゃんに届かねぇなら俺か及川呼べよ!って怒られたり。
しばらく見ていると、何度も背伸びしては届かず・・・を繰り返していた女の子が、諦めたのかため息をついた。
仕方ないなぁ、とっても優しいジェントルマンな及川さんが取ってあげるかな?
それで、お礼の代わり電話番号交換とかしちゃったり?
お茶に誘ったり?
・・・いやいや、オレには可愛い紡ちゃんがいるじゃないか!
邪な考えを振り払い、思い切りの営業スマイルを施し声をかけながら棚に手を伸ばした。
「これを取ればいいの?」
『あ、すみません!ありがとうござ・・・』
急に声をかけられて、驚きながら女の子が振り向いた。
『及川・・・先輩・・・』
えっ?
いま、オレの名前呼んだ?
こんな小さい子、紡ちゃん以外に知らないけど・・・
マジマジと顔を見て、ハッと驚く。
「えっ?・・・えぇっ?!・・・紡ちゃんなの?!」
ビックリして思わず声が大きく出てしまった。
そのせいか、そうじゃないのか、紡ちゃんは黙って俯いてしまう。
「えっと、とりあえずコレ。はい、どうぞ?」
オレはそう言いながら棚から取った物を渡し、その姿に疑問符を浮かべる。