第22章 終わりと始まり
『・・・え?』
及「紡ちゃん、バレー部のマネージャー始めたんだ?」
澤村先輩から視線を外さずに、及川先輩がそう言った。
『違います。お手伝いしてるだけで、だから正式なメンバーじゃありません』
及「そう?でも、お手伝いの割には随分と買い物してるみたいだけど?」
言いながらチラリとカゴの中に視線を動かした。
『こ、これは、』
私が答えようとすると、澤村先輩がポンッと私の頭に手を乗せてから、私の前に出た。
澤「彼女はホントにお手伝いをしてくれてるだけですよ?今のところは、ですけど。経緯は話せませんが、正式な部員ではなくても大事な人材です」
及「澤村君、だっけ?君は紡ちゃんがずっとバレーをやって来て、どれだけ一生懸命だったかは知ってるの?」
及川先輩に言われ、澤村先輩が私に1度視線を移してから及川先輩の方を見た。
澤「もちろん知ってます」
及「なら、どうして手伝いだけで終わらせてる?紡ちゃん位の頑張りだったら、それこそ女子バレー部にだって歓迎されてもおかしくない。それに気づかないとか?」
ピリピリとした空気が辺りを漂う。
澤「俺もそう思います。だけど、本人の気持ちや、そうする以上に大事な物があるのが分かりませんか?」
及川先輩の嫌な言い方に怯むことなく、澤村先輩は堂々とした姿勢で答えた。
及「ま、今日のところはいっか。紡ちゃん、今度ゆっくりデート、」
『しません』
及「間髪入れずに即答しないでよ。いくらオレでも悲しいよ?」
『デートはしません』
及「お茶くらいならどう?」
『それは結局デートですよね?』
及「バレたか・・・」
及川先輩はわざとらしく顎に手を付け、ウ~ンと唸る。
及「紡ちゃん、なんかいろいろと変わったよね?見た目もそうだけど、一瞬オレ分かんなかったし。それに前までは、ちょっとお茶くらいなら・・・って付き合ってくれたのにさ」
『それは及川先輩が拗ねるから・・・あ』
私が答えると、及川先輩はニヤリと笑いながら見つめて来た。
及「ふ~ん・・・じゃあ拗ねたらデートしてくれる?」
『しません』
及「そこまで頑なに拒むとか今までなかったのに、紡ちゃんもしかして・・・新しい恋、始めちゃた?とか?」
「『えっ?!』」
突然そんな事を言われて、どうしてか澤村先輩と同時に驚きの声を出してしまった。