第22章 終わりと始まり
真っ直ぐ及川先輩を見る事も出来ず、俯いたまま立ち尽くしていた。
及「・・・その制服、烏野だね?紡ちゃん、烏野に行ったんだ?」
静かに聞かれ、違うとも言えない状況に黙って頷いた。
及「どうして烏野に?紡ちゃん、いろんな所から推薦来てたんじゃないの?!もちろん青城からも。あのクリスマスの日に参考書なんて買い込んでるから変だなとは思ったけど、なんで?バレーは?!」
矢継ぎ早に聞かれ、何から答えればいいかも分からず何も言えなかった。
及「紡ちゃん?どうして黙ってるの?」
私の両肩に手を置き、腰を屈め、顔を覗く及川先輩と視線が合った。
『烏野は・・・推薦全部断って自分の意思で、入りました』
やっとの思いで、声を絞り出す。
及「・・・じゃあ、バレーは?烏野でバレー続けてるの?」
『バレーは・・・やっていません』
私がそう答えると、及川先輩は驚いた顔をして肩に置かれた手に力が入るのが感じられた。
及「・・・バレー、辞めちゃったの?あんなに一生懸命やってたのに!なんで?!」
『バレーは・・・もう、いいかな?って・・・何かいろいろ他にもやりたい事、あったし・・・』
ポツポツと話すと、及川先輩は瞬きを繰り返した。
及「もしかして・・・だけど。その、岩ちゃんの事が・・・あったから?」
その名を出され、今度は私が瞬きを繰り返す。
『その質問には、お答えできません・・・』
及「じゃあ、他にやりたい事ってなに?」
『それも、お答えできません・・・』
お互いの間に、沈黙が続いた。
両肩に置かれた手を、どうやって離して貰うか考え始めた時、及川先輩の体の向こうの棚の角から人影が現れた。
澤「あ、城戸さんゴメン!待たせた・・・って・・・あれ・・・?」
澤村先輩の声に体がピクリと動く。
それは及川先輩も同じで、私の視線を追ってゆっくりと振り返った。
澤「・・・あ・・・」
及「君は確か・・・烏野バレー部の・・・」
2人は状況が上手く飲み込めず、お互いに視線を合わせたままでいた。
澤村先輩は私の肩に及川先輩の手が置かれているのを見てから、私の表情を読み取ったのか隣に並ぶ。
澤村「えっと・・・烏野の澤村です。何かありました?」
澤村先輩が言うと、及川先輩はそれに反応して私の肩から手を離した。
及「青城の及川です・・・そっか、そういう事か」