第22章 終わりと始まり
私が声を掛けると、澤村先輩は振り向き軽く手を上げる。
それを見て、私は澤村先輩の所まで駆けて行った。
澤「忘れ物はない?大丈夫?」
『大丈夫です。準備万端です!』
Vサインを見せ、笑顔を向けると澤村先輩も笑う。
澤「あはは、じゃ、行こっか?」
『はい!』
元気よく返し、澤村先輩の隣に並んだ。
菅「え、ちょっと大地?行こっか?って、どういう事?」
歩き出そうとした瞬間、事情を知らない菅原先輩が澤村先輩を呼び止める。
澤「どういう事って、俺達はただ、」
清「菅原」
事の説明を澤村先輩が話そうとした所に、清水先輩が割って入る。
清「邪魔しちゃダメ」
菅「邪魔って、なんだよ?」
清「別に。城戸さん、こっちは気にしなくていいからね?放課後デート、楽しんで来てね?」
にこやかに言う清水先輩に対し、私と澤村先輩は顔を見合わせた。
放課後デート・・・清水先輩、及川先輩との電話の内容、バッチリ聞こえてたのか。
だからさっき・・・
『清水先輩?ホントに澤村先輩に荷物持ちお願いして大丈夫だったんですか?』
清「どうして?他の人の方がよかった?」
『そういう訳じゃないですけど、私達が2人で買い物行ったりしたら、他の人達が騒ぎませんか?』
清「だから、澤村に頼んだの。菅原とか田中に頼めば、買い物だって時間かかっちゃうし。特に菅原は送り狼になりかねない。それに澤村だったら周りがギャーギャー言っても、上手く立ち回れるから」
『そういうものでしょうか・・・』
清「大丈夫。私もフォローに入るから」
フォローに入るって、そういう事だったんですね・・・
放課後デート、なんてキーワードを持ち出したら、尚のこと騒ぎそうな気もするけど。
「「放課後デート?!」」
・・・ほら。
菅原先輩は固まり、日向君までも口をポカンと開け、周りもザワザワとし始めた。
この状況を、どうやって回避しようかと澤村先輩を覗き見た。
澤「またも清水にやられたな」
私にそう言うと、澤村先輩はザワザワとしているメンバー達に体を向けた。
澤「お前達、静かに!騒ぐほど元気なら、体育館開けるから掃除でもするか?」
練習・・・と言えば、やる!!と返事が帰ってきそうな所を、掃除と声をかける当たりはさすが澤村先輩だと思った。
体育館の掃除、大変だしね。