第22章 終わりと始まり
そのまま体育館通路の端まで移動して、ようやく会話を続けた。
『すみません、お待たせしました。で、用件はそれだけですか?』
« それだけですかって、紡ちゃん冷たいなぁ。放課後デートしようよ~?オレと一緒にオトナの階段、上がってみない? »
・・・・・・。
久しぶりの直電に、何事かと思えば。
『及川先輩、とりあえず放課後デートはしません。っていうか、そんな事した事ないのに当たり前のように誘わないで下さいよ・・・それからついでに言えば、オトナの階段とやらも上りません』
« 紡ちゃん、照れなくていいんだよ? »
『違いますっ!もう、私はいろいろと忙しいんです。他に用事ないなら、』
« あ、待って、もう1個! »
『今度は何ですか?』
ため息混じりに答えると、及川先輩は急に声のトーンを落として話し出した。
« あのさ、明日なんだけど・・・実は放課後に練習試合をする事になっててさ »
『練習試合?』
・・・それって、多分、うちの学校と・・・だよね?
私は自分が烏野に入学したなんて、及川先輩にはもちろん、松川さんにも教えてはいない。
« そう、練習試合!あのさー、聞いてよ紡ちゃん!飛雄のヤツが烏野のバレー部入ったんだって! »
『影山・・・ですか』
« それでね、そこの顧問の先生が溝口君に、あ、うちのコーチなんだけどさ。何度も連絡してきて、それで監督と相談して影山をフルで出すならって条件で受けたんだって »
・・・知ってます、と、返事をしそうになり、それを飲み込んだ。
今ここでそう答えれば、なぜ烏野に私がいるんだとか、なぜ知ってるんだとか、追求されそうなのが分かってるから。
いずれにしても、明日になれば分かってしまう事だけど、それはそれで今日伝えなければどうにかなるものでもないから。
« でね!紡ちゃん、その練習試合見に来ない? 普段からギャラリーなんて及川さんの溢れんばかりのファンでいっぱいだから、紡ちゃんもおいでよ?ね? »
『明日の練習試合を、及川先輩の応援に来い・・・って事ですか?』
« うん、そう!ちょっと都合で最初は遅れて行くかもなんだけど、紡ちゃんが応援してくれたら、オレ凄い頑張っちゃうんだけどな?だから、どう? »
どう?って、言われても・・・
私は明日、烏野のメンバーと一緒に青城に行く。