第22章 終わりと始まり
それもそうですね・・・と返して、清水先輩にひと声掛け、カバンからスマホを取り出した。
着信の相手は・・・
『あれ・・・及川先輩?』
私も黙っていればいいのに、予想もつかなかった相手に思わず言葉が漏れてしまった。
菅「えっ・・・と、まぁ、出てみたら用事がわかるから、どうぞ?」
『あ・・・はい』
こんな時間に、しかもこんな部員全員がいるようなタイミングで、さらに言えば着信の相手は及川先輩・・・
あまりいい用事とは思えず、出るのをためらってしまう。
やがて着信が切れた。
画面をチラリと見ると、着信回数は今ので4回目。
・・・どんだけ用事があるのだろう。
そう思いながら、後で私からかけ直せばいいよね?と自己完結してカバンにしまおうとした直後。
またもスマホが騒ぎ出した。
まさか、と、画面を見れば、やはりそこには及川先輩の表記がされている。
これは出るまで続くのかも知れない、だったら電話に出て用事を聞いてしまった方がいいかと思った。
『はい、城戸です』
« あ、出た出た!紡ちゃーん、オレだよーオレ!誰だか分かるぅ? »
・・・・・・。
着信を取り、開口一番に出す言葉はこれか・・・とガックリ脱力して、思わずステージに突っ伏した。
« あれぇ?もしかして分かんない? »
『・・・分かります、及川先輩・・・ですよね?』
« う~ん・・・ちょっと違う!残念!・・・正解はねぇ、紡ちゃんの事が大好きなみんなのアイドル及川さんでした! »
てへっ!と言いながら、周りに星を煌めかせているのが想像出来そうな返事に大きなため息が出てしまう。
『それで、その及川先輩が何度もストーカーの様に着信する程の用件て、何でしょう?』
« そんな淡々と言わなくても・・・及川さん悲しいよ »
『・・・及川先輩、用事がないなら切りますね。じゃ・・・』
« あ~!待って待って!切らないで!あのさ、今からオレと、放課後デートしない? »
『はっ?デートですか?!』
「「えっ?!」」
思わず大きく声に出してしまい、しまった・・・と後悔する。
周りは驚き、準備をする手を止めてコッチを凝視していた。
『あ、はは、は。・・・及川先輩、ちょっと待ってて貰えますか?場所変えますから』
それだけ伝え、通話口を押さえながら体育館の外へと出た。