第22章 終わりと始まり
オレが言うと、城戸さんはまた嬉しそうな顔をした。
『ありがとう、山口君が教えてくれたお陰だよ?』
「シィー!それは内緒だって!」
『・・・そうでした。じゃあさ、私と山口君の、2人だけのヒミツだね』
ヒソヒソ話をするみたいに、城戸さんがオレに耳打ちした。
2人だけの、ヒミツ・・・
そう言われると、何だかくすぐったい。
なんか、オレ達だけの凄く特別な約束よみたいな気がして。
ちょっとだけ、ドキドキしているのは何でだろう。
「だね。オレ達だけのヒミツね?」
そう返すと、城戸さんはひとつ返事をして笑った。
影「おい城戸」
「うわぁっ、ビックリしたっ」
影「はぁ?」
か、影山、急に現れるなよ。
超ビックリしたじゃん!
『山口君ビックリし過ぎだよ』
「いやだって、急に現れたから・・・」
さっきとは違った感じでドキドキして、もごもごとそう返した。
『そっか、山口君、背中向けてたしね?私は影山が来るの見えてたから』
城戸さんはそう言いながらも、オレを見て笑っていた。
『で、影山の用事はなに?』
影「あ?あぁ。城戸、なんか甘い物持ってねぇ?」
『甘い物?影山が甘い物欲しいとか珍しいね?』
影「っせぇ、脳みそ使うと腹減るんだよ!何かあるか?」
・・・どんな原理だよ、と、ツッコミそうになって、やめる。
ツッキーも怒ると怖いけど、影山も怒らせたら怖いから。
『う~ん、なくはないけど?チョコくらいなら・・・それでいい?』
影「それ、くれ」
影山が返事をすると、ちょっと待っててと言って城戸さんが自分の手荷物までかけて行った。
・・・気まずい。
城戸さん、影山とふたり残していくとか、気まずいよ。
なんとなくチラチラと不機嫌そうな影山を見る。
影「なに?」
「えっ?あ、あのさ!練習の合間に甘い物食べるとか、気持ち悪くなったりしないの?」
別に慌てる必要もないのに、何となくオレは影山にそう聞いてしまった。
影「別に?山口はなるのか?」
「オレ?・・・その時々・・・かな」
影「へぇ・・・」
会話が途切れる。
オレは影山と気まずい時間を共有しながら、城戸さんが戻って来るのを、ただ、待っていた。