第22章 終わりと始まり
やばい、メチャクチャ可愛い!
オレ、いま城戸さんが持ってるタオルになりたいとか思っちゃったよ。
「これを見た時、城戸さんみたいって思ったんだ」
『えっ?私うさぎっぽい?』
しまった・・・つい心の声が。
「あ、何でもないよ。あはは・・・」
『私って、小動物っぽいのかなぁ?月島君にも、ワンコって呼ばれるし』
多分、ツッキーがそう呼ぶのは小さくて可愛いって事だと思うよ?
何気にツッキー、動物好きだし。
普段あんな不機嫌に見せてるけど、ホントは優しいって、オレは知ってる。
キラキラした目でタオルを眺める城戸さんを見ていると、足音が隣で止まった。
「ツッキー!」
月「ポチ」
『ポチ?って、え?私の事?!』
月「そう。ワンコから昇格」
ツッキーの言葉にオレはちょっとビックリした。
だって、ツッキーが特定の名前を付けて呼ぶとか滅多にないから。
そういう時って、気に入ってるって事だから。
小学生の頃とか、自分で組み立てたロボットにも、全然違う名前付けて飾ってたし。
『ま、待って?ワンコから昇格って、ポチって結局は犬の名前でしょ!しかも、ネーミングセンスなさすぎる・・・』
月「・・・じゃあ、小さいから、プチ?」
『そうじゃないから!しかも小さいからとか余計だし!』
小さいから、プチ?
つ、ツッキー、それ面白過ぎる。
「プチ・・・プッククク・・・」
ツッキーが超真面目な顔で、プチ、とか。
やばい、ツボにハマる。
『・・・山口君?・・・怒るよ?』
オレがずっと笑っていると、城戸さんがムゥっとした顔でオレを見た。
「や、ゴメンゴメン・・・でもプチって・・・」
そんなやり取りをしていると、ツッキーが城戸さんの目の前にスクイズを突き出した。
月「これ、ワンコにしては上出来。もっと・・・甘くしてもいい」
それだけ言って、ツッキーは背を向けてしまう。
『結局、ワンコって呼ぶんじゃない・・・』
城戸さんはそう言って、スクイズを軽く振り、中身がない事に気が付くとオレにもそれを振って見せた。
月「ポチ、また入れといて」
1度立ち止まったツッキーが城戸さんにそう言う。
『だから何でポチ・・・あぁもう、なんか複雑!』
城戸さんはツッキーにそう叫び、でも、空っぽのスクイズは嬉しそうに胸に抱いていた。
「よかったね?」