第22章 終わりと始まり
「そうなの?」
『そうだよ?』
そう言い合って、お互いに笑う。
ん?
今、城戸さんとマンツーで話してる。
影山は、日向と菅原さんと何か話し込んでる。
・・・今なら渡せるじゃん?!
「城戸さんちょっと来て!」
『えっ!急になに?!』
オレは城戸さんの手を引いて、ステージの手荷物の所まで急いだ。
手を繋いだまま、ショップの袋を取り出す。
『どうしたの?』
「はいコレ。受け取って!」
半ば強引に突き出した。
『えっと・・・これは?』
「昨日の手当のお礼と、それからタオル汚しちゃったから・・・お詫びを兼ねて」
『えっ?えっ?!そんな気にしなくていいのに!応急手当なんて、これから何回だってあるかもだし』
突然こんなこと言われて、はいどうぞ!なんて突き出されたら、やっぱりびっくりしちゃうよね・・・
「でも、昨日・・・あ~その、鼻血でタオル何枚も汚しちゃったし、洗濯しても落ちにくいから。だから、受け取って!」
オレがそう言い切ると、城戸さんは一瞬困った顔をしたけど、でも、その後に笑ってくれた。
『分かった。でも、今回だけだよ?』
「うん、じゃ、はいコレ」
『あ、でもその前に・・・手を離してくれないと受け取れないかも?なんて』
手?
言われて手を見て・・・
「うあっ、ご、ゴメンっ!」
振りほどく様に手を離した。
「ホントにゴメンね!」
何度も謝ると城戸さんはクスクスと笑い出す。
『そんなに謝らなくても。こんな手で良ければ、いつでもどうぞ?』
そんな風に言って、また笑った。
「改めて、はい、コレ」
『ありがとう。ね?開けてみてもいい?』
城戸さんに聞かれて、オレは頷く。
カサカサと音をさせながら、城戸さんは 渡したものを丁寧に開封していった。
『あっ!可愛い!・・・凄い可愛い!山口君こんな可愛いの、ホントに貰ってもいいの?』
「うん、受け取ってくれると嬉しい」
城戸さんにあげたのは、昨日雑貨屋で見つけたハンドタオルとフェイスタオルのセット。
それぞれウサギがプリントされてハンドタオルの方はイチゴ、フェイスタオルの方は大きなハートを抱えている。
『うさたんがイチゴ抱っこしてる』
「そこ!人参じゃない所がポイントだよね!」
『うん、可愛い!』
何度も可愛いを連発して、城戸さんはそのウサギに顔を擦り寄せた。