第22章 終わりと始まり
~月島side~
はぁ、暑っつい・・・
この時期、春だからって言っても気温上がりすぎデショ。
もう、何巡目かになるスパイク練習にウンザリして来た頃、ようやく休憩の声がかかった。
僕は大きく息を吐いて、タオルを持ち水道場に向かう。
10分も休憩時間あるなら、顔くらい洗える。
タオルで拭くだけより、洗った方がマシだから。
バシャバシャと洗い流し、ついでに外した眼鏡も軽く水ですすいで掛け直す。
清「あ、いた月島」
背後から声を掛けられ振り向くと、体育館の扉から清水先輩が顔を出していた。
「何か」
清「何か?じゃないでしょ。はい、これ」
そう言って僕にスクイズを手渡してくる。
・・・今日はワンコが配ってんじゃないのか。
いや、何で僕がそんな事を気にしているんだ?
軽く自己嫌悪になり、眉をひそめた。
「・・・どうも」
受け取ったまま、フタを開けて口を付けようとした。
清「月島、感謝しなさいね」
・・・?
感謝?
僕が?
誰に?
・・・あぁ、僕を探してたからってこと?
「持って来てくれて、ありが、」
清「私にじゃない」
「はい?じゃ、誰に?」
せっかくお礼を言おうとして、途中で遮られ不満を漏らす。
清「さぁ?誰かしら。それは月島が自分で考えて」
そんな風に返して、体育館の中へと戻ってしまった。
なに、いまの。
いきなり謎かけみたいに言われても、理解不能なんだけど。
1人その場に佇み、胸の奥で小さな悪態をつきながらスクイズに口を付けた。
?!
なんだ、コレ?!
昨日とは違う味に驚き、もうひと口飲んでみる。
・・・スポーツドリンクじゃ、ない。
これは程良く酸味を抑えたレモン水だ。
思わずフタを外し、注ぎ口から中を覗く。
けど、刻んだレモンが入ってる事もなく甘い香りがするだけ。
甘い香りは、ハチミツ?
行儀が悪いとは思いながらも、注ぎ口からダイレクトに飲む。
やっぱり・・・僕が好みな味に近い。
どうしてコレを?
そこまで考えて、昨日の帰り際の山口が浮かぶ。
ワンコに寄りかかり、1人何かを話していた。
なるほど情報は、山口からか。
チッ・・・山口のお節介め。
でも、ハチミツを入れたレモン水と聞いただけでここまで好みの味に近いものを作れるんだろうか。
飲む程に、適当じゃないのが分かる。