第21章 背中合わせの2人
床が冷たくて、火照った体を付けると気持ちがいい。
へたり込んだ体勢のまま、前のめりにペタリと平たくなってみる。
久々にこんなに動いたかも。
家じゃ慧太にぃか桜太にぃ相手にしか、自己練してないし。
そんな事を考えていると、目の前でキュッとシューズが止まる。
月「プッ・・・ワンコ、伏せ?」
『違うから!』
思わぬ言葉に体を跳ね上げた。
『さっき言ったでしょ?ちゃんと名前があるって』
月「ふぅん。じゃ、はい」
ひと言だけ言って、月島君は手を差し出した。
なん、だろう?
捕まって立てって、事なのかな?
とりあえず差し出された月島君の手に、自分の手を重ねてみた。
月「ホラ、お手じゃん」
『そういう意味?!あ~もぅ!』
してやったりという顔を見せながら、月島君がニヤリとするのを見て、悔しいけど何か負かせれた気分がした。
『本当にワンコとか呼ばないでよ』
そう言って手を離そうとすると、そのまま掴まれて引き上げられた。
月「早く立ちなよ。片付けの邪魔だから」
『はいはい、どうもすみませんでした』
私はそう返して、散らばったボールを集めに駆け出した。
でもさっき・・・月島君はあんな風に言いながらも、立ち上がるのに手を貸してくれたんだなぁ。
意外に、優しい所あるのかも?
なんて勝手に思ったり。
本人に言ったら、きっと眉間に深い深いシワを寄せて、不機嫌になるんだろうけど。
清「城戸さん、お疲れ様。ボールこれで最後みたい」
『あ、あの!今日は本当に、』
清「大丈夫。ちゃんと50こなしたんだから、これでチャラ。ね?」
『はい!ありがとうございます!あ、このボール、ちょっと拭いてから片付けますね』
清水先輩に声を掛けられ、謝ろうとしたけど。
にこやかにそう言われると、それ以上蒸し返すのも返って悪い気がして。
せめて少し汚れがついたボールを磨いてケースにしまうことにした。
キュッキュッと音を立てながら、一心不乱にボールを磨く。
そう言えば、中1の時によくボール磨きさせられたよなぁ。
ゴシゴシ拭くとキレイになっていくボールを見ていると、懐かしい感覚がした。
よし、キレイになった!
ついでにこっちのも磨いちゃえ。
磨き終えたボールをしまい、新たにボールを取り出し磨き出す。
せっかく練習するんだから、キレイにしとこ。