第21章 背中合わせの2人
最初のうちは、トスが低いだとか、高いだとか文句ばっかり言っていた月島君も、私がその都度トスの高さを修正しながら合わせていくと、そのうち黙ってスパイクを打っていた。
いま、どのくらいだろう。
ボール出しの合間に得点板を覗き見る。
・・・まだ、28?!
始めてからかなりいってると思ったけど、決まるまで、という約束の為か思ったより点数になっていない。
単調なものばかりじゃ、拾われてしまう。
でも、月島君と合わせるのなんて初めてだし、急な変更は・・・出来ないしなぁ。
それにトスを上げるだけの私とは違って、オープンから飛んでスパイクを打ち続けている月島君は疲労の色が濃い。
月「ちょっと、そこのワンコ」
『わ、ワンコって!ちゃんと名前があるんだけど!』
月「いいから、早く」
続け様にスパイクを打っている為、澤村先輩がボール拾いをしてくれている、言わばロスタイム的な合間に月島君が小さく手招きをして私を呼んだ。
月「早く終わりたいし、単調過ぎるトス上げるのやめて。疲れる。ネット際で高低つけてくれたら、僕がテキトーに打ち分けるから」
『速さは?』
月「そっちに任せる。トス上げてくれさえすれば、あとは、こっちで」
『・・・わかった』
月島君から、早く終わりたいからっていう理由での指示が来る。
高低付けて、速さは任せる・・・って言われたけど。
『ねぇ、狙い目はある?』
ただ高低と早さだけじゃ、向こうにはキッチリ6人入ってるんだから拾われかねない。
せめて目安になる相手を決めていた方がいい。
月「通常、日向。あとは様子見ながら僕が」
『了解。じゃあ月島君の言う通りにするから』
そう言って立ち位置に戻り、菅原先輩に軽く合図を送る。
月島君の言ったことは、ほぼ完璧に近く、得点へと繋がった。
途中、日向君狙いだと影山に気が付かれたものの、直後には別の所を狙ったりと月島君が考えて打つ。
その繰り返しをするうちに、あっという間に罰と言う名の特別練習が終わった。
菅「終了~!!みんなお疲れ様~!」
菅原先輩がそう言って審判台から降りてくる。
いや、もう、ほんとに疲れた。
見れば月島君だって、腰を折って両膝に手を付き息を整えている。
トスだけを上げ続けた私でさえ、床にヘタリ込み肩で息をしているのだから、動き続けた月島君の疲労は相当だ。