第21章 背中合わせの2人
使い方違うけど、初心忘れるべからず、だ。
山「よいしょっと」
『わっ、なに?』
夢中になってボールを磨いていると、急に私の背中に山口君が寄りかかってくる。
山「あ~、今日は疲れたなぁ。・・・あ、今日もつかれたなぁ・・・か」
『どうしたの?』
山「ヘタレなケガはしちゃうし、ツッキーは怒鳴ったりするし」
私が返事をしても、それが聞こえていないかのように靴紐を緩めながら、まるで独り言のみたいに山口君は話し続ける。
山「ツッキー、何であんなに怒ってたんだろ?あ、ドリンクの事で怒ってたのかな?そう言えばツッキーって、スポーツドリンク苦手だったよなぁ」
・・・え?
山「確か中学の時もスポーツドリンクあんまり飲んでなかったし。ツッキー、家から持ってくる時は、いつもレモン水だったよなぁ・・・ハチミツ入ってる、甘~いやつ・・・」
レモン水?
ハチミツ入りの、甘い・・・
『山口君?それって、』
私が振り返りながら聞こうとすると、山口君はニコッと笑うばかりで。
月「遅い、山口。置いてく」
山「あ、ツッキー待って!今行くから!・・・じゃあね、城戸さん」
最後の方は小さく呟いて、山口君は月島君の後を追いかけて行くように体育館を出て行った。
今のって・・・もしかして?
顔を上げると、清水先輩がフワリと笑顔を向けてくれる。
清「よかったね、城戸さん。貴重な情報」
『はい!』
それを見ていた桜太にぃも、クスクスと笑いながら私を見た。
桜「紡。帰りにレモン、買って帰ろうか?」
そう言いながら笑う桜太にぃに、私は思い切りの笑顔を向けた。