第7章 嵐の足音
駅前通りまで来ると、さすがに街中がイルミネーションで煌びやかになっていて、思わず顔がほころぶ。
私は、まず初めに用事を済ませてしまおうかと書店へと足を運んだ。
参考書を手に取り内容がダブらないように確認する。
何冊かまでを候補に絞り、その中から2冊を選び会計を済ませると、再び煌びやかな街中へと入って行った。
文房具屋に立ち寄り、これから必要となるノートやペンなどを買い込むと、割と結構な重さになった。
参考書と文具、両方の店の袋をそれぞれ持つと、店番のおじいちゃんが、今日は特別だよ?と言ってクリスマス仕様の紙袋に荷物をまとめてくれた。
ちょっと大きいんじゃない?というサイズの紙袋を引っさげて通りを歩く。
時間を確認すると、まだまだ兄達との約束の時間までは遠い。
荷物もあるし、1度帰宅して出直すのもアリ?などと考えながらボンヤリと歩く。
桜太にぃに1回帰ると連絡しておこうかとスマホを取りだそうと、ちょっとよそ見をした時に路地から出てきた人とぶつかってしまった。
“ドンッ” バサッ・・・
「・・・っと」
衝突した弾みに私だけが地面にペタンっと座り込む形になる。
『すっ、すみませんっ!』
顔を上げながら叫ぶように言うと、ぶつかってしまった相手は、こちらこそ・・・と言いながら私を立ち上がらせるために手を差し出していた。
『あ・・・お、いかわ、先輩・・・』
「え・・・?えっー?紡ちゃんっ?」
私がぶつかってしまった相手は、及川先輩だったのだ。
ほんの数秒だったが、驚きのあまりお互い見つめあったまま固まっていた。
「ケガはない?大丈夫?・・・立てる?」
『あ、はい。大丈夫です』
自分で立ちあがろうとすると、及川先輩が差し出していた手で私の手をスッと掴み引き上げてくれた。
パンパンっと服を払っている間に、私が飛ばしてしまった荷物も拾ってくれた。
「はい、これ」
『ありがとうございます』
「あれ?参・・・考書?」
荷物が全部揃っているかを確認していると、持っていた参考書を見て及川先輩が不思議そうに私を見る。
『これでも一応、受験生なので』
「いやいや、そうじゃなくて。っいうか、血!血が出てるじゃん!!」
及川先輩に指摘された事で視線をやると、ほんの少しヒザを擦りむいてジワリと血が滲んでいた。