第21章 背中合わせの2人
その手を見て、ふと城戸の姿を思い出した。
「おい山口。そういや城戸は何でお前のシャツ着てんだ?」
正直、アイツのブカブカシャツ姿を見るのは初めてじゃない。
中学の時も2回ほど見た覚えがある。
1度目は、慧太さんのが自分の所に混ざってて気が付かずに持ってきたとか。
2度目の時は、何度も着替え過ぎてシャツが足りないからって洗っている時に、着替えがないのは女子なんだから困るだろって、国見が貸してたけど。
どっちにしても城戸には大き過ぎるサイズで、それを着た城戸は周りに検査待ちの患者みたいだと構われていた。
山「えっと・・・あぁ・・・シャツ、あぁシャツね・・・」
はぁ?
何ですんなりシャツを渡した理由が出て来ないんだ?
オレが聞いた答えをなかなか言わず、山口はみるみるうちに顔が赤くなっていく。
「・・・なんか言えない理由でもあんのか?」
山「えっ?!あ、いや、その。こ、困ってたから!城戸さんが!だから、ほら、えっと、オレは午後は見学しろって言われてたし、替えのシャツ余ってたから」
そんだけの理由で赤くなるとか、山口アホだろ。
いや、待て待て。
城戸が着替えに困ってた?
何でだ?
アイツ、ここへ来てからシャツなんて着替えてないだろ。
なのに困るって、どういう事だ?
コートにいる時は確かに城戸は自分のシャツだった。
その後、山口の手を冷やしたり・・・の時はシャツではなくジャージ着てたよな。
で、山口と先生と昼飯食う時には、山口のシャツだった。
・・・?!
まさかアイツ!
「山口!アイツ着替え持ってなかったのか?!ジャージの時、アイツもしかして!」
思わず山口に詰め寄ると、山口は慌てだした。
山「みみみ、見てない!オレは見てないから!ちょっとだけしか・・・いやいやいや!見てない!」
この慌てようからして、山口は・・・
何やってんだアイツは!
着替え持ってないなら俺に言えばいいだろ!
何ですんなり山口のシャツ借りて着てんだよ!
サイズが合わないのは俺も同じだけど!
そんで何で俺はこんなにイライラすんだよ!
あぁもう頭の中がグチャグチャだ!
« やっぱり全部聞こえてたんじゃない! »
突如、外から城戸の叫び声がした。
その声に周りのメンバー達も練習の手を止めた。
日「いまの、城戸さんの声だったよな?」