第21章 背中合わせの2人
~影山side~
アイツ・・・まだ戻って来ねぇ。
チラリと体育館の時計に目をやる。
あれから結構時間は過ぎているし、先生はとっくに戻って来てんのに。
いつまでもどこで何してやがる。
“ 心の洗濯 ”
アイツがあぁ言う時は、必ずと言っていいほど落ち込んでる時だ。
どこかで1人で小さくなって、チクチクと自分を責めて・・・泣く。
・・・・・・・・・まだ、泣いてるのか?
いや、さっき先生と澤村さん達が話しているのを聞いた時は、確か・・・。
武「あの2人は、大丈夫だと思います。気持ちがすれ違っているだけのようですから。まぁ、後は若い2人にお任せして・・・」
若い2人にお任せして・・・ってなんだ?!
見合いかよっ!!
あぁ、クソッ!
イライラして来た。
日「おい影山!おまえさっきから時計ばっか見てっけどなんだ?便所でも行きたいのか?」
イライラし始めた所に、アホ日向が呑気に声をかけてくる。
返事をするのも面倒だったから、そのままスルーを決め込む。
日「あっ、ムシすんなよ!影山お前絶対変だぞ?時計ばっか見てるし、ソワソワしてるし、トスにもキレがないじゃんか!」
「うっせえんだよボゲェ!!」
日「すぐそうやって怒る!だから城戸さんにも・・・ん?そう言えば城戸さん、まだ戻って来ないな?それに、のっぽヤロー月島も」
そうだ・・・
戻って来ないのはアイツだけじゃない。
いったい2人はどこで何してんだ?
よりにもよって、月島と2人。
日「・・・なぁなぁ影山、さっき月島はなんであんなに城戸さんに怒ってたんだ?」
「知るかボゲェ!」
山「影山も日向も、あんまりケンカしてると・・・ほら」
途中から山口が間に入って来て、そんな事を言いながら澤村さん達がいる方をコッソリ指をさした。
日「うわっ、ヤベェ!めちゃくちゃコッチ見てるっ」
山「だろ!あんまり騒ぐと怒られるから。ボール出しならオレ手伝えるから練習しないとヤバイんじゃない?」
2人の会話に、確かに澤村さんを怒らせるとヤバイってのは分かる。
なんせ俺と日向は、それを経験済みだからな。
ボールを掴み直し、フッと息を付く。
山「あ、影山?ボールならオレが」
「あ?あぁ、じゃあ・・・」
そう答えて、テーピングでキッチリ巻かれた山口の手にボールを渡す。