第21章 背中合わせの2人
こ、この状況って結構、凄い事になってるんじゃ?
急に目の前の月島君の体温を感じて、顔が熱くなって行く。
そして、少しずつ視線を上げ、月島君の顔を見た。
月「・・・なに」
『な、何って?!そんなにくっつかないでよ、』
月「・・・は?そっちが先に!」
『いいから早く離してってば!』
月「僕は離してもいいケド・・・」
『だったら!』
月「落ちてもいいなら・・・」
ほぼ同時に言って、お互い手を離す。
その途端、自分の足元が段差の端にいることに気が付いてグラつく。
『うきゃっ、落ちるっ!!』
とっさに手を伸ばし、再度・・・しがみつく。
月「離せって言ったから」
少し面倒そうに月島君がため息混じりに言った。
『落ちるの分かってるのに離さないでよ!』
月「それにあの悲鳴、色気の欠片も何もない。しかも2回とも」
『失礼ねぇ!ビックリしたんだから仕方ないでしょう!』
月「あ~うるさい。小さい犬がキャンキャン吠えて何言ってるか分かりまセーン」
『また犬とか!』
私は私で、そして月島君は月島君でお互いに体を支えている事も忘れ、言い合いになる。
ここが、どこであるかもすっかり忘れ・・・
澤「お前たち、いい加減にしなさい!!!」
『・・・・・・・・・はい・・・』
澤村先輩の怒号にビクつきながら、小さく返事をして。
月「何で僕まで・・・」
月島君は軽く息を付き、顔を背けた。
は、初めて澤村先輩に怒られたけど、それは日向君がビクビクするのは分かる気がするという怖さで。
私は何となく大人しい人が怒ると怖いっていうのを目の当たりにしながら、大きくため息を吐いた。
澤「とにかく、2人ともなかに入りなさい・・・まったく・・・話は中に入ってからだ」
『はい・・・ゴメンなさい・・・』
この後さらに怒られるのかと思うと気が沈む。
月「・・・行くよ。早くしないとまた怒られるから」
月島君がそう言ったのを聞きながら、体がクイッと引っ張られた。
『ちょっと?』
繋がれた部分を見ながら、月島君に声をかける。
月「ワンコはちゃんと捕まえとかないと、逃げるかも知れないから」
振り返ることもなく、月島君はそう言って手を引いたまま体育館へと足を踏み入れた。