第21章 背中合わせの2人
月「それに、いいの?」
『はいはい、今度はなに?』
次はどんな嫌味を言われるんだろうと思い、適当な返事を返す。
その割には何も言って来ない月島君を、思わず見上げた。
月「いいなら、いいケド」
『・・・だから、何の事?』
月「練習終わったら・・・見れなくなっちゃうんじゃない?」
『何が言いたいのか分かりません』
私はそう言って、フンっと横を向いて見せた。
月「ふぅん・・・見たかったんじゃないの?・・・カッコイイ~、ブロック」
!!!!!!!
月島君の言葉に、体全体ごと振り返る。
や、やっぱり・・・
『やっぱり全部聞いてたんじゃない!!』
思わず大声で叫んでしまう。
月「僕は別に、聞いたとも、聞いてないとも言ってない。あ、そうだ。もうひとつ思い出した・・・キレイなサーブ、だったっけ?」
悪びれた様子でもなくニヤリとする月島君に、私は開いた口をパクパクさせてしまう。
月「早く行かないと見れないよ?ブロックとサーブ」
『や、やめて!何度も繰り返して言わないで!!』
繋がれた手を振り回し、なおも叫びながら言うと、ガラガラと大きな音をさせながら目の前の扉が大きく開いた。
澤「お前達いつまでもうるさいぞ!」
『うきゃぁぁぁぁぁぁ!!!』
月「ちょっ・・・」
予期せぬ大声に驚いて、月島君にしがみついてしまった。
澤「おいおい・・・そんなに驚かなくても・・・」
しがみついた体の隙間から、そっと目を開いて、声の主が澤村先輩だと分かるとホッと息を付く。
『・・・あ、あは。さ、澤村・・・先輩・・・び、びっくりした・・・』
澤「俺もまさか扉の前にいるとは思ってなかったから、驚かしてゴメン。それより2人とも、随分と仲良くなれたみたいで・・・その、良かったよ」
目を泳がせながら言う澤村先輩は、私達がスッと視線をずらし頭を掻いていた。
別にこれといって仲良くなれたわけじゃないんだけどな・・・
それに何でそんな、視線をずらすとか。
そこまで考えてから、自分の状況を確認する。
隙間なくピッタリと寄せられている自分の全身。
私の両腕は、それを離すまいとシッカリ月島君の体をホールドしている。
月島君もそう。
右腕こそ、バランスを取るために扉の横に手をついているけど、左腕は私の肩を囲み寄せている。