第21章 背中合わせの2人
月「さっきから大事そうに抱えてると思ったら、そんな物入れてたんだ?・・・だからあの王様にお子様扱いされんじゃない?」
『あのねぇ!このミルクティーは私が世界で1番美味しいと思ってるんだから、別にいいでしょ!』
月「ふぅん、そんな風にムキになるとか、ホント、お子様」
つい反論してしまった私も悪いけど、なんとなくモヤモヤして月島君に無理矢理マグボトルを向けた。
『はい、飲んだら分かるから』
月「いや、僕は別に・・・」
『飲・ん・だ・ら・分・か・る・か・ら!』
そう言いながら月島君の手にマグボトルを握らせる。
月島君は凄く嫌そうにため息を吐いて。
月「・・・何で僕が・・・」
そうこぼし、何度か迷いながらもようやくマグボトルに口をつけた。
私は、その喉元がコクリと動いたのを、ずっと見ていた。
月「・・・甘い」
『でしょ!美味しいでしょ?!・・・ん?』
いま月島君、甘いって、言わなかった?
パッと顔を覗くと、それは好きな物を口にした時のような、ちょっと嬉しそうな感じ。
前に影山に飲ませた時の、影山が言った“ なんか色々甘いんだよ!”とは違う。
ふふ~ん・・・なるほどねぇ。
思わずニヤついてしまうのを隠しきれずにいると、キュッとマグボトルの蓋を締めた月島君と視線が絡む。
月「ちょっと何その顔・・・気持ち悪いんだけど・・・」
『月島君・・・もしかしなくても、甘党、でしょ?』
私がそう指摘すると、月島君はフイッと横を向いてしまう。
『当たり?・・・ねぇねぇ、当たった?』
わざと覗き込んで、そう言ってみる。
月「・・・うるさい。ハァ・・・ほらもう行くよ!」
『あ、ちょっと・・・!』
甘いもの好きなのを知られたのが嫌だったのか、私にマグボトルを押し付けて渡すと、私の手を引いてスタスタ歩き出してしまう。
『そんなに手を引っ張らなくても私は逃げたりしないから!それから、月島君の1歩が大きいよ!』
私が小さく叫ぶと、扉の前で立ち止まる。
月「へぇ・・・それはそれは、僕の足が長くてスミマセ~ン。お子様の足の長さを考えてなかったデ~ス。・・・それに、早く行かないと練習終わっちゃうし?」
『だから先に行ってって言ったのに!だいたい練習マジメにやるの好きじゃなさそうなのに今更?!ホンット、月島君って訳わかんない!』