第21章 背中合わせの2人
武田先生と話をいろいろな話をして、気持ちが軽くなった。
そんな時、今の話を月島君に言ったらどうか?なんて言い出す先生に、私は首を振った。
だって私、あんなに月島君を怒らせてしまうくらい、嫌われていると思うから。
なのに。
武「月島君、そこにいるのは分かっていますよ。出てきなさい」
?!?!?!
い、いま先生なんて言ったの?!
息が止まるような思いで、先生が見ている方向に視線を移した。
武「隠れていても、僕からはずっと見えてましたよ?降参して出てきなさい、月島君」
えっ、待って!
僕からはずっと見えてたって、えっ?!
急速に早まる鼓動に、息苦しさを感じならも目が離せない。
少しの沈黙の後、ジャリ・・・という音を立てながら、私達の前に月島君が姿を現した。
『ウソ、でしょ・・・』
必死に絞り出した言葉さえ、先生はニコニコとしながら私を見ている。
武「もうバレてしまったんですから、月島君もどうぞこちらへ」
そう言って先生は月島君を呼び寄せた。
重い足取りを見せながらも、渋々と月島君は歩いて来る。
『先生、いつからですか!最初から知っていたんですか!どうなんですか?!』
思わず先生の腕を掴み、詰め寄ってしまう。
武「最初は僕も分かりませんでした。でも、話し始めてから月島君がいる事に気が付きました。校舎の陰に隠れているようでしたが、反対側の窓ガラスには姿が映っていましたから」
『映っていましたから~じゃないですよ!いつから月島君いたんですか!ねぇ先生!!』
動揺のあまり、そこに月島君がいることも忘れて先生をグラグラと揺らし続けた。
武「ぼ、僕が気づいたのは、澤村君達があなたを必要だと言った・・・という辺りですけど。あくまで僕が気がついたのがそこからで、月島君はもっと前からいたかも知れませんね~」
あっけらかんと言い放つ先生を、なおも揺らし続ける私の手を、月島君が掴んだ。
月「ちょっと、その位にしなよ?先生殺す気?」
月島君に言われ、我に返って先生から手を離した。
『ご、ごめんなさい先生・・・』
私がそう言うと、先生は揺らされたことでズレたメガネを掛け直し、大丈夫ですよと笑ってくれる。
私は自分の手に違和感を覚え、それを見ると、月島君はまだ私の手を掴んだままだった。
そっと月島君を見上げると、それに気付いて手を離された。