第21章 背中合わせの2人
「城戸さんは、本当にバレーが好きなんですね?お兄さんもそうでしたけど、ちょっと一緒にいただけで、周りをよく見てる。そう言った点を踏まえると、澤村君達が熱心にあなたを誘った理由が分かります」
『桜太にぃ・・・ですか?』
「はい。お兄さんは人を観察するのは職業病だと笑っていましたが」
そう言うと城戸さんは、何か思い当たる節があるようで苦笑していた。
「城戸さん、今のを月島君に直接話してみてはどうですか?そうすれば、きっと月島君だってあなたに話したい事が言えるのでは?」
『無理ですよ。だって私、月島君には嫌われているみたいだから。だからさっきもあんなに怒って・・・』
手にしたマグボトルを握りしめながら、城戸さんは悲しげに瞳を揺らした。
「そうでしょうか?僕はきっと大丈夫だと思いますよ?」
そう告げると、フルフルと頭を振り、僕を見る。
『私と月島君は、出会いからして最悪でした。お互い何か言えば、言い合いになったりとか。だからきっと、私の言葉なんて届かないです』
嫌われているかも知れないと思う相手の事を、こんなにも一生懸命に話せるのだから、一方通行で済ませてしまうのは勿体ない。
それにきっと月島君だって、城戸さんの事を少しは理解しようと思ったから、あんな風に陰に隠れてまで様子を見に来たのだろう。
「それでは、月島君本人に聞いてみましょうか?今の話を聞いて、どう思ったのか」
そう言うと城戸さんは僕の顔を不思議そうに見つめ返した。
『それって、どういう事ですか?』
未だ表情を変えずに僕を見る城戸さんに、僕はひとつ頷いて校舎の角を見た。
「月島君、そこにいるのは分かっていますよ。出て来て下さい」
僕が声をかけると、城戸さんは弾かれたように同じ方を見る。
「隠れていても、僕からはずっと見えてましたよ?降参して出てきなさい、月島君」
なかなか姿を表さない月島君に、もう一度声をかけた。
すると観念したのか、校舎の影からゆらりと長身の姿を僕達の前に現した。