第21章 背中合わせの2人
小さな声で、安心させるように僕は呟いた。
まるで小さな子供を落ち着かせるように頭を撫でながら、僕はふと視界の隅に人影が見えた事に驚いた。
誰、でしょうか。
ま、ま、まさか、教頭先生じゃないですよね・・・
恐る恐る眼鏡に手をかけ、その方向を凝視する。
・・・あれは!
月島君?
よく見れば、建物の影には隠れているものの、その反対側の校舎の窓ガラスに、少し俯いて立っている月島君の姿が映し出されていた。
彼も城戸さんの様子を見に来たのだろうか。
それならば、いっそ彼もここへ呼んで話をした方が・・・
いや、それではさっきの様にぶつかり合って、お互いがまた傷つけあってしまうかも知れない。
澤村君はさっき、月島君も本心からあんな事を言い放ったわけではないと教えてくれた。
だったら、この状況を上手く使うしかない。
「城戸さん、顔を上げて?あなたに聞いてみたい事があります」
そう言って、城戸さんに顔を上げさせる。
「城戸さんは、月島君の事をどう思ってますか?」
『えっ?!』
僕が突拍子もなく聞いたから、城戸さんはとても驚いていた。
『ど、どう思っているか・・・って、どういう・・・?』
「あはは、恋愛感情があるか聞いてるんじゃないですよ?月島君の事を、同じ部員としてどう思うのか?って事です」
『部員と、して・・・ですか?』
そう小さく呟く城戸さんを見て、それから校舎の影をそっと覗き見る。
ふふ、やっぱり。
敢えて月島君の名前を出した事で、自分の事が話されているのが気になるようで、静かに聞き耳を立てているのが分かる。
「どうですか?」
答えを急かすつもりではないけど、城戸さんにそう声をかける。
『月島君は・・・羨ましいです。あんな風に背が高くて、それを生かしたブロックもキレイで。先生は見たことありますか?月島君のブロック、凄いカッコイイんですよ?』
そう話す城戸さんはキラキラとした目で僕を見た。
「残念ながら僕はまだ見た事はないですね・・・何せここ数日間は職員室に篭もりっきりでしたから」
そう笑って返すと、城戸さんも笑う。
『勿体ないなぁ、先生。間近で見たら、きっと惚れ惚れしちゃいますよ?ホントにカッコイイんです、月島君のブロック。高い位置からのからのスパイクでも、バシーン!って叩き落とすんです。』
「そうなんですか?」