第21章 背中合わせの2人
「必要、というのは、どういった意味合いで?」
『・・・マネージャー補佐、の事です。澤村先輩達から熱心にお願いされて、1度はお断りしたんです。でも、その後いろいろと話をして、自分でも考えて、それで少しでもお手伝い出来たらって思って。条件付きで引き受けたんです』
「その条件って言うのは、何ですか?」
『青葉城西との、練習試合が終わるまでって約束で、引き受けました。でも、今日実際にみんなに関わってみて、私はホントに必要とされているのかなって』
青葉城西との練習試合まで・・・か。
澤村君との間に、そんな約束事があったのか。
なるほど。
だから月島君はあの時、あんな事を言っていたんですね。
「澤村君達があなたを必要だと思ったから、熱心に声を掛けたのでは?もし、マネージャー補佐としての役目が誰でもよければ、断られた時点で他の人を探していたのではないでしょうか」
「でも・・・私・・・」
そう呟いて、城戸さんは伏し目がちになってしまう。
「ちなみに、ですが。澤村君はあなたを誘った時に、なんて?」
『えっと・・・俺には必要だから・・・?ん?あれ?俺達には必要だと思ったから、もし、入部してくれたなら、全力で守るよ・・・だったかな?』
「っひゃぁぁぁ!澤村君は男前ですねぇ・・・ちょっと言葉を入れ替えたら、まるでプロポーズの様ですね。ドキドキしちゃいましたよ、僕は」
『ぷ、プロポーズ・・・ですか?』
「えぇ、僕もいつかお嫁さんを貰う日が来たら、言ってみたいと思っちゃいましたよ。・・・っと、話が逸れてしまいましたね。・・・でも、今ので答えは出てるじゃないですか」
僕がそう言うと、城戸さんは小首を傾げた。
「澤村君達が、自分達にはあなたが必要で、全力で守るって言ったんでしょう?残念ながら世の中には、欲しい物を手に入れる為に上辺だけで言う人もいるでしょう。ですが、澤村君がそういった人間ではない事は、あなたも分かっているのでは?」
『・・・はい』
「だったら、答えは最初から出てるじゃないですか。ね?」
『だけど、さっき私がした事で月島君をあんなに怒らせてしまって。そのせいで、周りを不快にさせてしまいました』
城戸さんはそうこぼして、滲んでくる目を擦り俯く。
僕は言葉をかけながら、その俯いた頭にフワリと手を乗せた。
「大丈夫ですよ・・・」