第21章 背中合わせの2人
清水さんはそう言って、少し俯いた。
菅「確実かどうか、分からないけど・・・オレ、心当たりはあります」
菅原君が言うと、お兄さんは場所を聞いて立ち上がろうとした。
「待って下さい、僕が行きましょう」
桜「でも、先生は顧問だし、体育館にいた方が」
お兄さんの言葉に僕は首を降り、大丈夫ですよ、と返す。
「こういう時は、第三者である僕が行くのがいいんですよ。お兄さんでも、菅原君や清水さんでもない、僕が。月島君にも城戸さんにも平等になれる者の方が、相手も話やすいでしょうから」
僕がそう言うと、お兄さんはまだ何かを考えている。
「それに、曲がり形にも僕はこの学校の教師ですから、校舎の形や外階段の位置までバッチリ把握出来てますから!」
そんな風に言って胸を張って見せるとお兄さんはフフッと笑う。
桜「それでは先生、お願いします。それから、コレを持って行ってやって下さい。紡が元気になる魔法のアイテムですから」
お兄さんから城戸さんのマグボトルを手渡され、落としたりしないように大事に抱えて見せた。
では、行ってきますねと声をかけ、僕は体育館を出る所で、月島君を追って行った澤村君と入れ違う。
「澤村君、月島君の方は大丈夫でしたか?」
僕が聞くと、澤村君はひとつ頷き、月島君の様子を教えてくれた。
澤「先生はどこへ?」
「僕はこれから、城戸さんの所へ行ってきます。居場所の見当は菅原君が教えてくれましたから」
澤「城戸さんも外へ出てるんですか?・・・!もしかして泣いてるとか?!えっと、お、俺も行きます!」
止めに入れなかった責任を感じてか、澤村君が慌て出すのを制し、大丈夫だからと落ち着かせる。
「城戸さんはきっと、顧問と部長の2人が現れたらビックリしちゃいますよ。だから、僕が行ってきます。澤村君は練習があるから体育館へ戻って下さい。大人の意見が必要なら、城戸さんのお兄さんもいるし、的確なアドバイスをして貰えるでしょうから。僕は顧問と言っても名ばかりで、そういった指導とかは出来ませんから・・・」
指導が出来ないのは本当で。
その不甲斐なさを隠す為に早口になってしまう。
澤「武田先生?俺達は先生の事を大事な顧問だと思ってます。確かにルールも全然知らないけど、でも、それ以外の所で全力でフォローしてくれてるじゃないですか。今度の青城の事とかも」