第21章 背中合わせの2人
桜「彼からしたら凄い侵略者だ。だから突然の事に彼も戸惑い、虚勢を張ってしまう。お互いがそれに気付いて、気持ちの譲り合いが出来た時、初めて部にも影響が出てくると思います。バレーは周りとのコミュニケーションが必要なスポーツですからね」
「深い・・・ですね。僕は学生時代から机に齧り付いてスポーツには縁がない生活を送ってきたので、そういった仲間意識は強くなれば強くなるほど素晴らしいと思います」
お兄さんと話をしているうちに、月島君と城戸さんに動きがあった。
それに気がついた時、ステージの下にいた澤村君たちが慌て出す。
清「澤村、月島出てったけど」
菅「月島追いかけようか?」
澤「スガ、清水。月島は俺が話すから、城戸さんの方を頼む」
バタバタと二手に分かれて駆け出して行った。
「はぁ~・・・緊迫した時間でしたね・・・」
桜「でも、俺は妹の成長が見れたので楽しかったですよ?」
「大物ですね、お兄さんは。僕は小心者だからハラハラしちゃいましたよ」
そう言って笑い合っていると、何やら神妙な顔をした清水さんと、ホットした顔の菅原君が戻って来た。
そこに城戸さんの姿がないことに疑問を抱き、向こう側で何を話したのか聞いてみる事にした。
すると清水さんが、さっきまで城戸さんが持ち歩いていた物を握りしめながら報告をしてくれる。
「心の洗濯、ですか?」
僕が繰り返すと、2人は頷く。
清「でも、私は何だか腑に落ちなくて。城戸さん、自分がいなくなった後もこれを託すから頼みますって言ったんです。戻るまでとかじゃなく」
菅「清水の思い過ごしじゃないの?だって紡ちゃん、笑ってたよ?」
菅原君が言うと、清水さんは首を降りながらため息を漏らした。
清「だから菅原はセクハラ大王なんだよ」
菅「ちょっと清水!桜太さんの前で爆弾発言やめてって!」
桜「セクハラ?」
菅「あ、いやいやいや、あの、こっちの話ですって」
セクハラ・・・などと聞いては、教師である僕も聞き捨てならないんだけれど。
その辺は追々として。
清「確かに城戸さんは笑っていたけど、でもそれはホントに笑っていた顔じゃなかったと思う。何かを隠す為に、笑ってたような」
桜「教えてくれてありがとう。様子を見てくるよ。紡がどこに行ったか、菅原君達は見当がつく?」
清「ごめんなさい、私はちょっと・・・」