第21章 背中合わせの2人
「待って下さい。どうしてそんなにお人好しでいられるんですか。ひねくれ者の僕なんて、放っておけばいいのに」
僕は、何を言っているんだろう・・・
思わず発した言葉に、自分で戸惑ってしまう。
澤「放って置くことなんか出来ないから、かな?」
ゆっくりと振り返りながら澤村さんが言う。
澤「ここに入部してくれた以上、みんな仲間だと思ってる。例えどんなひねくれ者だとしても。月島のそのひねくれた所は、俺は個性だと思ってるし。ま、度が過ぎるのはダメだけどな?それに、自分で考えてご覧なさいよ。素直でニコニコしている月島を。どう?違和感あるでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・確かに」
澤「ほらね?誰にだって個性はある。月島が言うところの俺のお人好しって言われる部分も、それに入るんじゃないかな?」
悪びれて言った僕の言葉も、すんなりそう返されると何も言えなくなった。
澤「それじゃ、俺は先に行ってるから、落ち着いたら戻って来なさいな」
後ろ向きで軽く手を振りながら、澤村さんは歩いて行ってしまった。
その姿を見送りながら、大きく息を吐いた。
コミュニケーションが苦手・・・
正面からそんな事を言われたのは初めてだ。
〖 どうして私を真っ直ぐ見て言わないの? 〗
さっきの言葉を思い出す。
またひとつ大きく息を吐くと、その目前の先に城戸さんが歩いて行くのが見えた。
どこへ行くんだ?
小さな後ろ姿を、しばらく目で追っていると、校舎の角を曲がり見えなくなった。
戻ろう。
そう思って体育館へと足を向けると、扉を開けて武田先生が出て来る。
なぜか咄嗟に体を隠す。
・・・いや待て、なんで僕は隠れてるんだ?
そう思いながらも、1度隠れてしまうとすぐには出られない。
とりあえず、武田先生がいなくなるまでやり過ごそう。
そんな風に考えながら、その姿を見ていたけど、あっちは職員室に行く方向ではない。
よく見れば、手には城戸さんのマグボトルを持って歩いている。
城戸さんを追いかけているのだろうか?
気がつけば僕の足は、無意識にその後に続いていた。