第21章 背中合わせの2人
澤「月島。少し、話をしようか」
ほら来た、どうせ説教しに来たんデショ。
「僕は別に、話すことなんでありませんよ」
澤「いいから聞けって」
そう言って澤村さんは、水道場から少し離れた体育館通路まで僕を連れていく。
澤「ここなら誰にも聞かれないでしょ」
澤村さんは、僕と向かい合わせになって、通路の壁に寄りかかった。
「それで、話っていうのは何です?」
面倒な事はゴメンだし、長い説教をされるなら早い方がいい。
そう思ったから、澤村さんにそう言葉をかけた。
澤「頭の回転がいい月島の事だから、もう、分かってるんじゃないかな?俺が言おうとする事は」
バツが悪くて、言葉を発する代わりに黙って横を向いた。
澤「その顔は、後悔してる顔だと思っていいのかな?・・・どう?」
何も話さず、目さえ合わせていないっていうのに、どうしてそんな風に思えるのか理解不能だ。
それでも、そんな澤村さんを目の前にすると、黙り続ける事は出来なかった。
「別に・・・」
うまく、言葉が出て来ない・・・
喉の奥に何かがつかえて、どう言葉を出していいのかも、出来ない。
澤「・・・待つよ。だから慌てなくていい」
なかなか話出せない僕に、澤村さんはそう言った。
「・・・別に、あんな事を言うつもりは、なかった、です」
澤「うん・・・」
「ドリンクの味が違う事も、気づいて、ました」
澤「うん・・・」
「なのに、それを受け入れる事が・・・出来なくて。今まで誰も、そんなの気づかなかったし・・・だから・・・」
そうだ・・・
今までは他人と必要以上に接したくないから、機嫌が悪い振りをしてれば周りは関わって来なかった。
誰かと話をするのも、必要最低限で終わらせてた。
「城戸さんに、あんな顔をさせるつもりだって・・・」
澤「そっか・・・」
ポツポツとしか言葉が出ない僕を、澤村さんはずっと黙って、待っていてくれた。
澤「月島。周りとのコミュニケーションを取るのが苦手な月島だから、今すぐ謝って仲直りして来いって言っても、難しいだろ?でも、さっきの発言に関しては必ず謝る事。出来れば早いうちに、だな。俺が月島に言いたいのは、それだけだ」
そう言うと、澤村さんは寄りかかっていた壁から背中を離し、僕に背を向けて体育館に戻ろうとする。