第21章 背中合わせの2人
~月島side~
他人と必要以上に関わるのは好きじゃない。
だから、ずっと自分に必要ではないと思う人には線引きをして距離を保っていた。
それは別に、山口だって例外じゃないケド。
山口は僕が何度怒ったりしても、必ず後から着いて来ていた。
なのに今、振り返ると山口はいなかった。
きっと今頃、城戸さんを王様達と囲って慰めて、甘やかしてんだろ。
そう考えながら、手の中にあるスクイズを見た。
・・・ホントは、これに口を付けた時に気が付いていたんだ。
それまで飲んでいた物と、違うってコト。
薄味になっていて、少しだけ飲みやすくなってた。
そもそも僕はスポーツドリンク自体、あまり得意な方ではない。
だから清水先輩が何度も作り直していた物さえ、味が馴染めないから息つく程には飲んでいなかった。
家から持ってくる時は、違う物を入れてたしね。
その事実を話したくなくて、横を向いて僕には構わなくていいって言ったのに。
『月島君、それ、本心じゃないでしょ?・・・本心だったら、どうして私を真っ直ぐ見て言わないの?』
本心じゃないだろって、見抜かれていて・・・焦ったから。
月「だったら・・・だったらどうなのさ?どうせスグいなくなるクセに、マネージャーの真似事して人の心に土足で入ってくるな!」
あんな風に、言うつもりはなかった。
凄く、傷付いた顔をしていたな・・・。
あんな顔、させるつもりもなかった。
元々ひねくれ者の僕は、ゴメン、なんて言えない。
でも、あんな傷付いた顔を見てしまったから、ゴメンの代わりになる言葉を探していたのに。
影「おい月島!何もそこまで!」
影山が割り込んできて、言葉を探すのをやめてしまった。
・・・クソッ!
なんでこんなにも、イラつくんだ!
頭も心も、傷付いた城戸さんの顔で埋め尽くされて行く。
浮かんでは消えて、そしてまた浮かび上がる顔を洗い流そうとして水を思い切りだし、顔を洗った。
どれだけ洗い流しても消えない影に、どこへもやれない苛立ちを力いっぱいタオルを握る事で誤魔化していた。
「月島」
?!
急に声をかけられ、タオルを握りしめたまま振り返った。
「澤村さん・・・驚くじゃないですか。それとも、驚かすのが趣味なんですか?」
僕に何を言いに来たのかなんて、スグに見当がつく。