第21章 背中合わせの2人
月「チッ・・・ほらほら城戸さん?王様のお出ましだよ?いいよねぇ。何かあればスグ王様に守って貰えてさ。・・・結局、守られてばかりで、何も出来ないってことデショ?」
影「月島・・・テメェその手を離せ!」
『影山は黙ってて!!』
自分が思ったより大きな声だったのか、周りが静まり返ったのを肌で感じる。
影「でも!」
『いいから!!』
月島君から目が離せないままで、影山にピシャリと言って黙らせる。
数秒の沈黙の後、月島君がフイッと顔を反らし私の肩から手を外し体育館の扉に手をかけた。
『待って!』
私はその手を捕まえながら、月島君の正面へと回り込んだ。
『月島君に許可なくドリンクを作り替えたことは謝る。・・・ゴメンなさい。それに私が気に入らないなら、それは別に構わないよ。だけどね、これから引退する時が来るまで、月島君も含めたみんなが気持ちよく練習出来るように考えてくれてる清水先輩の思いは・・・大事にしてあげて欲しい』
それだけ言うと、私は月島君の手を離した。
月「邪魔」
山「ツッキー!」
山口君が声をかけながら駆け寄ってくる。
月「着いてくんな山口!」
山口君はそう言われて、私達の手前まで来て足を止めた。
そんな山口君を月島君は振り向くこともせず、扉を開けて出て行ってしまった。
『ゴメンね山口君。月島君、怒らせちゃった』
山「オレは大丈夫、いつもの事だから」
『影山もゴメン、さっき大きな声出しちゃって。庇ってくれようとしたんでしょ?ありがとう』
2人に向けて、私は大丈夫だからと笑って見せた。
影「こういう時に、無理して笑うなよ・・・」
『・・・こういう時だからこそ、だよ』
そう言って返すと、私の頭にポンッと手を置きジッと私を見ていた。
離れた場所からパタパタと複数の足音が聞こえ、やがてそれが菅原先輩と清水先輩の物だと分かるのに時間はかからなかった。
菅「紡ちゃん大丈夫?!」
清「城戸さん!」
『菅原先輩、清水先輩・・・っとと』
駆け寄って来た勢いのまま、清水先輩がギュッと私を抱きしめる。
清「ゴメンね城戸さん・・・嫌な思いさせて。私の方が先輩だから、月島には私から言えばよかった・・・」
震えた声で、清水先輩は私を抱きしめながら頭を撫でた。
そんな清水先輩の体をそっと押し返し、笑って見せた。