第21章 背中合わせの2人
そんな事を思いながらもスクイズに口をつける月島君から視線が外せないでいると、増々機嫌が悪くなるのが目に見えて分かった。
月「用事がないなら、どっか行っ」
『用事ならあるよ!』
突き放す勢いで言う月島君に、思わず取り繕うかのように言ってしまう。
月「じゃ、なに?」
そっぽを向いたまま、そう返す月島君に尻込みしかけながらも私は聞いてみる。
『えっ、と、あの、ドリンクの味は、どうかな?とか?』
月「は?こんなの、誰が作っても同じデショ?・・・それともなに?僕のには毒でも盛ったとか?」
不機嫌な顔のまま私を見下ろす月島君は、更に不機嫌さが増した気がした。
『毒なんて盛ってないよ。ただ、清水先輩がスクイズ作り直す度に、月島君のは大半残ってるって聞いたから、もしかして味の濃さとか気になるのかな?って。だから今渡したヤツ、少し調節してみたんだけど・・・』
月島君の睨みに怯みそうな気持ちを隠して、清水先輩と相談した事を伝えてみる。
月「ほっといてくれよ!」
私の言い方がいけなかったのか、急に月島君が大声を上げた。
勢いに押されそうになり、つい私も声を荒らげてしまう。
『そんな事は出来ない!』
そう言うと月島君が、私の肩を押し掴む。
その反動で、持っていたカゴが大きな音を立てながら床に落ちた。
月「本人が言ってるんだから構わないだろ」
『それでも、これから先に必要だと思うから!』
私の方を掴む手に、力が入るのが分かる。
月「何が必要なのかは知らない。ケド、僕に構わなくていい」
顔を背け、静かに怒りながら月島君は言った。
『月島君、それ、本心じゃないでしょ?・・・本心だったら、どうして私を真っ直ぐ見て言わないの?』
月「だったら・・・だったらどうなのさ?どうせスグいなくなるクセに、マネージャーの真似事して人の心に土足で入ってくるな!」
胸が・・・痛い・・・
声を荒らげて放たれた言葉が胸に深く突き刺さった。
確かに月島君の言う通りかも知れない。
いまのところは・・・と言うだけで、私は青城との練習試合後のバレー部の在籍は、あるか分からない。
そんな中途半端な人間にアレコレ言われるのは、月島君だって面白くはないだろう・・・
影「おい月島!何もそこまで!」
それまで何も言わずに様子を見ていた影山が、私を庇う様に間に入って来た。