第21章 背中合わせの2人
清水先輩と作り直したドリンクを持って、二手に分かれて配り歩く。
清水先輩には、澤村先輩に配ってと言われた時にかごの中身が少ない方を渡し、残りを私が配る事にした。
気がつけば、いつの間にか山口君が縁下先輩にレシーブ練習して貰っている。
ま、桜太にぃがいるし、澤村先輩がいろいろと確認してあのメニューなんだろうと思いながら、その2人にも仕掛けのあるドリンクを入れたスクイズを手渡した。
山「城戸さん、ありがとう。あと、ちょっとお願いがあるんだけど」
『お願いって?あ、もしかして飲ませて欲しいとか?』
意地悪な笑いを浮かべて、そう言ってみる。
直後に隣でゴホゴホと咳き込む縁下先輩は、タオルで口元を押さえながら目に涙まで浮かべていた。
山「ち、違うよ!ほら見て、ここ!テーピングが少し浮いちゃったから見て貰おうと思ったんだよっ」
真っ赤になりながら言う山口君に、ちょっと言ってみただけだよと返し笑う。
山「もう、城戸さんがビックリすること言うから、縁下さんが死にそうになってるじゃん」
山口君が縁下先輩の方に目をやり、心配そうにしているから、そっと縁下先輩の背中をさすった。
『すみませんでした。山口君をからかおうと思ったんですけど、縁下先輩のツボに入っちゃったみたいで・・・ゴメンなさい』
ゴホゴホとむせていた縁下先輩も、すぐに落ち着き笑顔を向けてくれた。
縁「さすがに今のはヤバかったよ。弁当ならまだしも、ね。もう俺は大丈夫だから山口見てあげて?」
縁下先輩に言われ、肩から下げたテーピングの中から適当な幅の物を切り出し、サッと山口君の手に貼り付けた。
『桜太にぃのテーピングを剥がす事は出来ないから、とりあえず応急で上から貼っとく。じゃ、無理せず頑張ってね』
そう言い残し、他のメンバーにも駆け足で配る。
最後は・・・月島君か・・・
タオルを手にして壁際にいる月島君の元へ急ぐ。
『はい、月島君。ゴメンね最後になっちゃって』
そう言いながら渡すと、特に何も返答はなく受け取る。
別に観察するつもりではないけど、月島君が蓋を外しひと口含むのを見ていると、視線がぶつかってしまった。
月「なに?まだ何か用事?」
うわぁ・・・よく分からないけど、なんか機嫌悪そう・・・
なんかって言うか、絶対に機嫌悪いよね・・・
眉間に深~いシワ、刻まれてるし。