第21章 背中合わせの2人
~月島side~
なんか・・・イライラする。
ついさっきまでは、そんな事なかった。
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城戸さんの両腕を見て何も出来ない初心者と言い放ち、そんな僕に影山が突っかかる。
威勢よく口撃してくると思ってたら、ダンマリ決め込むし。
・・・ツマラナイ。
そう思って、うるさい影山をスルーしてその場を離れようとしたら。
菅「危ない!!」
そう声を上げる菅原さんに驚き振り返ると、無造作に置いたタオルに足を滑らせてステージから落ちかかっている城戸さんの姿が目に入る。
危ない!!!!
咄嗟に片腕を伸ばし、間一髪・・・というところで城戸さんを抱きとめた。
・・・上手く受け止められてよかった。
僕自身がホッとしたのは言うまでもなく、だけど、腕の中にいる城戸さんは微動だにしない。
チラリと横目に見ると、宙に浮いたままの自分の手を不思議そうに眺め、そのまま呆然としている。
「いつまでくっ付いてるつもり?」
小さく息を吐いて言葉を投げると、ピッタリと付けられた体を浮かし、ゆっくりと顔を上げた
城戸さんと視線が絡む。
受け止めた相手が僕だった事が信じられないという顔をして、瞬きもせず固まっている。
元々のこの身長のおかげか、こんな至近距離で誰かと視線を交わすなんて、皆無だった事もあり、僕も視線を絡めたままでいた。
体育館に吹き抜ける風に遊ばれている、フワフワした髪・・・。
長い・・・まつ毛。
黒目がちな、大きな瞳・・・
その澄んだ瞳に吸い込まれそうになるのが怖くなる。
「ちょっと。顔、近いんだけど」
空いてる手で眼鏡を押さえて横を向いた。
『わ・・・わわわっ!ゴメンなさいっ!』
「あ、ちょっと!!」
急に動き出すからバランスを崩しそうになり、もう1度抱き寄せてしまう。
「ホント、いい加減にしてくれる?せっかく無キズで助けたのに、その後でケガとかされたら意味ないデショ」
嫌味な言い方をしながら、城戸さんの顔を覗く。
『ハイ、スミマセンデシタ・・・』
「・・・なんでカタコトなのさ」
ホント、読めないヤツ。
そう思って、口元が緩んでしまう。
「それで、いつまでそうやってる気?」
もう1度言うと、また慌てだし、降ろして欲しいと言うから、足が床についたのを確認してから手を離した。
ホント、変なヤツ。