第21章 背中合わせの2人
清「澤村、ドリンクの準備出来てる」
清水の後に続いて城戸さんもスクイズが入ったカゴを運んでくる。
「わかった、ありがとう。みんなに配ってくれる?」
俺が言うと2人はそれぞれカゴを持ち直しコートへ入っていった。
けど。
城戸さんが月島にスクイズを渡し何か話していたが、急に遠目にも分かるくらい月島が不機嫌になるのが見えた。
ーガシャン!ー
月「ほっといてくれよ!」
『そんな事は出来ない!』
月「本人が言ってるんだから構わないだろ」
『それでも、これから先に必要だと思うから!』
何を言い争っているんだ?
月島が城戸さんの肩を掴んだ勢いでカゴが落ち、大きな音がした所で全員がそっちに目をやる。
明らかに体格差がある2人が向き合って言い合いをしている。
更に言えば、月島は城戸さんの肩を掴んだままだ。
これは止めに入らないと・・・そう思い慌てて立ち上がった。
そばにいたスガも俺が立ち上がるのを見て、スクイズを置いた。
桜「待って」
月島達の所に向かおうとした所を桜太さんに止められる。
菅「でも、あれじゃ紡ちゃんが・・・」
そう言うスガに、桜太さんは黙って首を振る。
桜「紡は大丈夫だから、このまま様子を見よう」
桜太さんはなぜか落ち着いていて、慌て出す武田先生にさえ、このまま黙って見ていて欲しいとまで言っていた。
「桜太さんっ、あのままほうっておいていいんですか?」
自分に確認するかのように、もう1度聞いてみる。
男同士ならまだしも、片方は女の子だし、それに桜太さんの妹だから。
桜「大丈夫だって。紡はそんなにヤワじゃないよ?普段はポワポワしてるけど、心配いらない。俺と慧太の妹だからね」
「そう言われても・・・」
桜「万が一にも、取っ組み合いになって、どっちか、もしくは両方がケガしても、安心して?医者はここにいる」
桜太さんは軽く笑いながら自身を指さしていた。
「そこまで言われるんでしたら・・・」
そう言って、俺もスガもその場に足を止めた。