第21章 背中合わせの2人
~澤村side~
山口の手当てが終わり、桜太さんが救急箱を閉じた。
武田先生と数回会話を交わした後、じゃ、これで・・・と腰を上げる桜太さんを呼び止める。
「あの、もし良かったら見学されて行きませんか?」
桜「いいの?部外者がいて邪魔にならない?」
「そんな事ないです。経験者に見学して貰えるなんて、なかなかない機会だし、それでアドバイスとか貰えたら・・・なんて」
言いながら武田先生にも視線を移す。
武「経験者なんですか?!それは僕からも是非お願いします!あの、時間が許す限りでいいので是非!」
俺よりも何故か必死に話す武田先生を見て、桜太さんが笑った。
桜「では、お邪魔にならない様に静かにしてますね」
そう言って桜太さんは、またステージの上に腰を落とした。
その隣で、山口は瞬きを忘れているかのように練習をジッと見ている。
出来ることなら山口も練習に参加させてやりたいけど、せっかく軽いケガで収まっているのに悪化してしまう事も考えると気軽にGOサインは出せない。
何かいい案はないだろうかと、桜太さんを見続けてしまう。
でも確か、桜太さんは小児科担当って言ってたし、管轄外の事をあまり聞くのも申し訳ないようで・・・
あまりに見ていたせいか、桜太さんが笑い出し俺を見た。
桜「澤村君?そんなにジッと見られたら俺に穴が空いてしまうよ」
「す、すみません!そんなつもりじゃ」
桜「分かってるって。ちょっと言ってみただけ」
そう言って桜太さんはまた笑い、俺の方へと体を向ける。
桜「澤村君が何を考えていたか、分かるよ?山口君の事、考えていたんでしょ?」
言いながら隣の山口の肩に手を置いた。
桜「練習させてあげたい、でも、ケガの事もあるから迷ってる。そして、俺に聞いてみたいけど、なんて聞けばいいのかな?じゃない?」
「・・・お見通し、だったんですね」
そう答えると、桜太さんは穏やかな笑みを浮かべて返す。
桜「それから、今は小児科勤務ってだけで、特別な知識の為に先生について勉強してる訳じゃないけど、一般的なレベルでいいなら答えられる範囲では解答を出す事は大丈夫だと思うよ」
「はい!ありがとうございます」
その言葉を受けて、山口の事を聞いてみる。
すると条件付きで別メニューの練習なら大丈夫だという答えを貰う事が出来た。