第21章 背中合わせの2人
もしかしたら、単に個々の味の好みなどから少しずつ違ったのかも知れないけど。
でも、子供ながらに兄達がどんな物を飲んでいるのか知りたくて、イタズラに慧太にぃのスクイズを盗み飲んだ時は、普段自分が口にしている物とは全く違う飲み物のようで驚いた事は覚えている。
その過去の事も含めて清水先輩に話すと、やってみる価値はあるかも知れないと返してくれた。
『ただ、何も聞かずに味の変更をするのは実験みたいで気が引けるので、本人達に聞いてみましょう』
清「待って?1度何も言わずに味を少し変えてみましょう?本人達が気が付くかどうか、知りたくない?」
そう言って清水先輩は、いたずらっ子の様に笑うと、それぞれのスクイズにドリンクの粉末を調節して入れ始めた。
『許可なく味を変えても大丈夫なんでしょうか?』
少し不安が残り、それを口に出した。
清「大丈夫よ、多分。私がマネージャーになって最初の頃は、ドリンクの味なんて一定してなくて澤村達に水増やしてとか、減らしてとかよく言われたし」
だったら尚更、本人達に確認した方がと言ってみるも、清水先輩は笑うばかりで。
でも、清水先輩が楽しそうに笑っているのを見ると、これ以上は何も言えないなと私も笑いをこぼした。
ただ、月島君のはどうしたらいいんだろう。
どのタイミングで作り直しても大半が残っているなら、薄味の方がいいんだろうか?
清「どうかしたの?」
他の人の分を作り終えても、なかなか月島君の物を作ろうとしない私を清水先輩が覗く。
『あの、月島君のはどうしたらいいのか分からなくて』
どのタイミングで作り替えても大半が残っているのであれば、いつもと同じに作っても飲みにくいから残しているとしたら・・・
そこは給水しやすい様に作ってあげたいとは思う。
でも何か他に理由があっての事なら、本人に聞くのが早い・・・けど。
・・・聞き辛いよなぁ。
嫌われてるっぽいし・・・私。
清「とりあえず今回は、少しだけ薄めにしてみましょう。それで反応があったら、対応出来るし」
『分かりました、そうします』
解決の糸口が掴めないのに、時間ばかりかけてはいられない。
私はそう思って月島君のドリンクを作り直した。