第20章 心の拠り所
『今みたいにケガをして心がしんどくなったり、落ち込んだりした時は、清水先輩や私に寄りかかって欲しいと思う。マネージャーの仕事って雑用とか手当とかだけじゃないし、そうされる事でコートには立てなくても、心はひとつになれる気がするから』
武「心の拠り所・・・という事でしょうか」
それまでずっと黙って話を聞いていた武田先生が、静かにそう言った。
『そんな大げさではないけど、疲れたなぁとか、そんな時に寄りかかってくれたら清水先輩だって話を聞いてくれると思うし。期間限定みたいではあるけど、私だって嬉しいよ?あ、でも私じゃ小さいし、頼りなくて寄りかかって貰えないかも?』
深刻になり過ぎないように、敢えて自虐して自ら笑う。
私が笑うと、それに釣られて山口君と先生も笑った。
武「う~ん・・・そうですねぇ、確かにあなたは小柄で自分に自身がない様に言ってますけど。僕は今の話を聞く限り、そうは思いませんよ?山口君だって、そう感じているでしょう?」
武田先生が言うと、山口君は大きく頷いた。
『・・・そう、でしょうか?』
私がそう返すと、武田先生はとてもニコニコしながらゆっくりと頷く。
武「それに、そう思っているのは僕だけではないと思いますよ。ね、皆さん?」
武田先生はそう言ってニコニコしたまま私達の後ろに目線を動かす。
・・・皆さん?
私達も武田先生の目線を追って振り返ってみる。
そこには何となくバツが悪そうにした部員達が扉にもたれたり、その場に立っていたりしながら視線を泳がせていた。
『せ、せせせ、先生いつから知ってたんですか?!』
みんながいることと驚いたのとで、思わず武田先生の肩をガクガクと揺らす。
武「いつからと言われたら・・・、城戸さんがみんなが遠く感じる、の辺りからでしょうか」
穏やかな笑顔を崩すことなく、サラッと武田先生が言う。
『割りと最初の方じゃないですか!!何で教えてくれなかったんですか!』
武「ぼ、僕は教えようと思ったんですけど、その、澤村君が、ですねぇ」
『澤村先輩?!』
武田先生を解放し、澤村先輩をジロリと見つめる。
私にジロリと見られ、澤村先輩は居心地悪そうに頭をかいた。
『澤村先輩・・・盗み聞きするなんて、とっても趣味悪いですよ?』
澤「あ、いや、えっと・・・そんなつもりはなかったんだけどね・・・あはは」