第20章 心の拠り所
山「・・・城戸さんは、何でも分かっちゃうんだね・・・凄いや・・・」
ポツリと言って、山口君は伏し目がちになる。
『私も、同じ気持ちだから』
山「城戸さんも、どこかケガしてるとか?」
『私のは、ケガじゃないけどね。まぁ・・・どんなに頑張っても変えられないし、超えられない壁ってところかな』
山「超えられない壁・・・」
『月島君も前に言ってたけど、日向君は背が小さいからスパイカーに向いてない、リベロでもやれば?とか。もうちょっと背があれば良かったのに、とか皮肉っぽく』
その時の月島君を思い出して、お互い苦笑する。
『私、そのリベロだったんだよね・・・』
山「えっ?!だってさっきセッターだったよね!」
『小学生の時に少しだけセッター教わったけど、結局は小さいからってだけで外されて、リベロなら出来るだろうって。その後、山口君も知ってる通り中学では事情があってセッターだったけど』
私は食べ終えた山口君のお弁当を片付けながら、そのまま話し続けた。
『ずっと悔しかった。努力すれば技術は上がる。でも、どんなに頑張っても背が伸びる事はないし。うちの家族、父も2人いる兄も180センチくらいあって、母でさえ170センチあるのに、どういう訳か私だけ身長止まったままで。背が高いみんなみたいにスパイク打ってみたくても、小さいからムリだ、やめとけって言われ続けて』
山「だからあの時、ツッキーに・・・」
そう呟く山口君に私は曖昧な笑みを浮かべて頷き、隣に座り直した。
あの時は、日向君に向けられた刃の先が私にも突き刺さったから。
« 努力だけで何とかなると思ったら大間違いなんだよ »
そう言い放った月島君に、全てを否定されたような気にさえなった。
『でも、日向君はそれを打ち破って見せてくれた。それは山口君も見てたでしょ?』
今度は山口君が曖昧に笑う。
『もうひとつの壁は・・・性別、かな』
山「性別?」
『そう。山口君は今は他の1年みたいにすぐにコートに呼ばれないとしても、努力次第ではコートに立ってみんなと一緒にプレーする事が出来る。でも私は、どんなに頑張って努力した所で、いざ公式戦ともなれば絶対にコートに呼ばれる事なんてないから。だから近くにいても、遠く感じるんだよ?』
お弁当を包み終え、はい、と言って山口君に手渡す。
『ひとつだけ、言えるとしたら』