第19章 傷痕
のんびりとした口調で武田先生が笑った。
澤「先生、お願いがあるんですけど・・・」
そう切り出して、澤村先輩が山口君や桜太にぃの事を説明してくれる。
武「そういう事でしたら何も問題はないでしょう。城戸さんのお兄さんですし、お医者様でもあるなら逃げ道はいくらでもあります。もし教頭先生に詰め寄られても、応急処置で来て貰った、とか。その時は僕に任せて下さい」
『ありがとうございます!』
澤「城戸さん、この事を桜太さんに連絡して貰えるかな?」
澤村先輩に言われて、私はそれを文字にして送った。
武「それでは僕は職員室に戻って、コレ、食べてから来ますね」
にこやかに言って、武田先生は背を向けて歩き出した。
『あの武田先生!!待ってください!』
声をかけながら駆け寄り、先生の腕を捕まる。
『山口君と私、お弁当食べるのこれからなんです。それで、もし先生さえ良ければご一緒しませんか?』
1人でお弁当を食べるのが味気ないのは、私も知っている。
私もみんなと知り合う前は、1人で食べていたから・・・
武「いいんですか?僕も混ぜて貰っても」
『勿論です!』
私がそう言うと、武田先生は嬉しそうに笑いながらお弁当の包みを抱え直した。
『私、山口君を呼んで来ますから』
武田先生にそう言って、私は体育館の中へと戻った。
何だかちょいちょい山口君を放置してる気がして申し訳ない。
『山口君?何度も待たせちゃってゴメンね?』
冷却ジェルを手に当てながら、ステージの端っこでポツンと座る山口君を見てホントに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
『みんなはお昼食べ終わっちゃったんだけど、武田先生もこれからだって言うから、3人で食べよ?』
山「うん、分かった。あ、コレどうすればいい?」
冷却ジェルをヒラヒラさせながら山口君が近づいてくる。
『まだ、痛む?』
山「痛かったのは、城戸さんが冷やしてくれたりしたから結構平気かも」
『だったら、お昼食べる間は大丈夫そうだね?あとね、もう暫くしたらだけど私の兄が山口君の手を見に来てくれるって。だから、テーピングは兄に任せようと思って』
私はさっきの事を山口君に報告しながらお弁当の準備をしていると、目の前にスッとTシャツを差し出された。
『これは?』
顔を上げ、山口君を見た。
山「オレの替えのシャツで良ければ」