第19章 傷痕
清「城戸さん気をつけてね?菅原は・・・」
『セクハラ大王・・・』
清水先輩に合言葉のように返すと、周りからどっと笑いが起きる。
菅「なんだよその恥ずかしい異名!」
『じゃあ・・・セクハラ上司?』
菅「紡ちゃん?!」
べーッと笑って返し、澤村先輩には電話してきますと言ってその場を離れた。
桜太にぃ、電話出れるかな?
着信だけ残して、すぐに切った方がいいかな?
そう迷っていると、手元のスマホが震えだす。
あれ?
桜太にぃからだ。
かかってくるくらいだから、電話しても平気だったんだと思いながら着信を取った。
『もしもし?桜太にぃ?』
« あ、紡?いま大丈夫だった? »
『うん、私もいま桜太にぃに電話しようと思ってたから』
« 俺に?何かあった? »
桜太にぃに聞かれて、山口君の事を話し、テーピングはどうしようとか相談をする。
« 実際に見てみないとなんとも言えないけど・・・もう少ししたら仕事が終わるから、そしたら学校に寄ろうか? »
『え?ホントに?それは助かるけど・・・』
何でもない日に、部外者が来ちゃっても平気なんだろうか。
« 部外者だから、判断に迷ってる感じだね? »
『まぁ、完全部外者ではないけど。一応私の保護者だし』
« 一応って、酷いなぁ紡は。あ、そうだ。近くに澤村君っているかな?確か彼、部長だったよね?電話代わってくれる? »
『分かった。少し待ってて』
私は踵を返し澤村先輩の所に戻ると、経緯を簡単に説明してスマホを手渡した。
澤「お電話代わりました、澤村です。あ、はい、こんにちは。・・・え?はい、もちろん大丈夫です。あ、じゃあ車の件だけ顧問の先生に確認したら折り返し・・・分かりました。はい、それでは後で・・・はい、失礼します」
通話を終えた澤村先輩からスマホを返される。
『澤村先輩、桜太にぃはなんて?』
澤「後で山口の手を見に来てくれるって。保護者の見学は随時大丈夫だから、桜太さんなら大歓迎だよ。あとは武田先生に車の許可を貰えれば、だけど」
『その許可は私が・・・あ、武田先生!』
お弁当の包みを持った武田先生がタイミングよく現れ、私の声を聞いてこっちへ歩いてきた。
武「みんなもうお昼食べちゃったんですね~。職員室で食べるのは寂しいと思って体育館に来たんですけど、ひと足遅かったようですね」