第19章 傷痕
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『どう?痛みは落ち着いてきた?』
山口君の手から冷却ジェルを外しながら問いかける。
すると山口君は、手のひらを何度か握ったり開いたりした。
山「うん、大丈夫みたい。まだ芯の方は違和感あるけど」
違和感、かぁ・・・
『んー、どうしようかな・・・』
山「・・・オレ、そんなに重症?」
私が漏らした言葉に、山口君は不安気な顔をする。
『あ、そうじゃなくてね。痛くないようにテーピングしてあげるには、どうしようかな?って』
素人が下手に巻くだけまいても、かえって痛くなったら困るし・・・
・・・あ、そうだ!
『山口君、ちょっとだけ待ってて。専門家に聞いてみる。繋がるかは、分かんないんだけど』
そう言ってカバンからスマホを取り出し、澤村先輩の所へ急いだ。
『澤村先輩!ちょっといいですか?山口君の事で・・・』
お弁当を食べていた澤村先輩は箸を止め、こちらを振り返る。
澤「どうしたの?もしかして山口、結構重症とか?」
『いえ、そうじゃなくて。違和感なくテーピング巻くのに、ちょっと確認とかしたくて。それで、桜太にぃに電話したいんですけど・・・いいですか?』
澤「そんな事、わざわざ許可取らなくても大丈夫なのに」
『一応、お昼休憩とは言っても部活中なので、その変の線引きは必要かな?とか』
緊急事態なら別だけど、一応数日は澤村先輩の下で動くのだから、何かあれば、まず、澤村先輩に確認って言うのが1番だから。
その事も付け加えて話をした。
菅「紡ちゃんは律儀だなぁ」
『数日とはいえマネージャー補佐だから、直属の上司は澤村先輩なので。あ、菅原先輩も副主将だから、条件は同じですよ?だから何かあれば言ってくださいね?』
なんか照れるなぁ・・・とか言いながらも、菅原先輩がなんでも?と聞き返すから、私はにこやかに頷いた。
菅「じゃあ、はい!」
菅原先輩が箸を置き、なぜか両手を広げて待っている。
やっている事の意味が分からず呆然としてしまう。
菅「紡ちゃん。上司の言うことは絶対、なんでしょ?だから、ほら、ギューッとか?」
あぁ、なるほど・・・
半分笑って小さく息をつく。
清「菅原」
澤村先輩の隣でお弁当を食べていた清水先輩が、表情も変えずたったひと言で菅原先輩を制した。