第19章 傷痕
ヤバッ、落ちる!!
菅「危ない!!」
ギュッと目を閉じ、次に来るだろう床とのご対面を覚悟した。
・・・のに?
あ、あれ?!
い、痛くもないし、床とのご対面もない。
と、いうより、私まだ浮いてる?!
恐る恐る、そっと目を開けてみる。
誰かの肩越しに宙に浮いたままの私の手がみえて、床までの距離は、はるか遠い。
誰かの・・・肩越し?
・・・誰の?!
視線だけ動かして、グルリと周りを見る。
影山・・・じゃない。
澤村先輩でも、菅原先輩でも・・・ない。
・・・・・・ま、さか?
月「いつまでくっ付いてるつもり?」
耳元に届く声に驚きながら、ピッタリと付けられた体を浮かして、ゆっくりと顔を上げた。
つ、つつつつつ・・・月島君?!?!
至近距離に月島君が顔があって、あまりに驚き過ぎて、言葉が出て来ない。
月「ちょっと。顔、近いんだけど」
空いてる方の手で軽く眼鏡を押さえながら、不機嫌な口調で月島君は言う。
『わ・・・わわわっ!ゴメンなさいっ!』
焦って体を仰け反らせる。
月「あ、ちょっと!!」
支えがないまま体を動かしバランスを崩す。
咄嗟に私を引き寄せた月島君に、またも抱き着くような格好になり、更に焦る。
月「ホント、いい加減にしてくれる?せっかく無キズで助けたのに、その後でケガとかされたら意味ないデショ」
呆れながらハァーっとため息を吐かれる。
『ハイ、スミマセンデシタ・・・』
月「・・・なんでカタコトなのさ」
フッと笑いの息を付く月島君を見た。
その顔はさっきまでの意地悪な物とは違い、今まで見た事のない、月島君の顔だった。
月「それで、いつまでそうやってる気?」
そう言われ、急に恥ずかしさが込み上げてくる。
『お、降ろして貰ってもいい、かな?』
私が言うと、月島君は黙ってそろりと降ろしてくれた。
『なんか、その・・・いろいろありがとう・・・』
月「こんなのたまたま起きた事だから、イイ人だとか、思わないでよね」
フイッと顔を背けながら月島君が言った。
『でも、月島君のおかげでケガとかしなかったし。ホントにありがとう』
月「・・・別に。・・・あぁ、そうそう。小さいのがピョンピョン飛び跳ねるのは、日向だけで充分だから」
そう言い残して、月島君はそのまま体育館から出て行ってしまった。