第19章 傷痕
月「気付いてたんだ?あのサーブ、失敗なんかじゃない。キミを狙ったって事。・・・どうしてセッター潰しの事を知ってるんだ?って顔だよね、それ」
何も言わず黙っている私に、月島君は続けた。
月「見てたからだよ。キミがセッター潰しにあって負けたところを。あの大会の対戦相手は、僕と山口の学校の女子チームだからね」
そんな風に言われて、思わず山口君を振り返ると、山口君はハッとして気まずそうに私を見ていた。
そっか・・・
2人ともあの中学出身だったんだ?
月「あの時と今と、随分と見た目は変わっちゃってるけど、すぐ分かったよ。王様と同じ中学出身でバレーやってたって聞いて。あのチーム、小さいセッターは1人しかいなかったみたいだし?それにさっきのだって、どうせ王様の差し金デショ?結局、自分じゃ何も出来ないんじゃん」
あの大会を見ていたのなら、知っていると言われれば納得出来る。
でも、どうしてそんなに敵を作るような言い方をするのだろう。
月「まだ、ダンマリ決め込むつもり?張り合いないんだけど?いつもの威勢はどうしたんだよ」
自分を落ち着かせる様に、軽く息を吐いた。
『・・・月島君が私を嫌いなのは、よーく分かった。でも、ひとつだけ訂正して。確かに私は1人じゃ何も出来ないかも知れない。だけどさっきのは影山の差し金でもないし、みんなで私の為に考えてくれた打開策だから、その事を悪く言わないで」
そこまで言って、月島君がどう言ってくるか様子を見ようとした。
影「おいっ!今の話、本当か?」
影山?
月「なに?急に」
影「さっきのサーブの話だよ!城戸を狙ったって!」
『か、影山!いいから』
影「お前は黙ってろ!」
月「聞こえてたんだ?その言葉通りだけど?そんなの王様に関係ないじゃん。それとも何?お気に入りの庶民をいじめられて気に入らないとか?」
影「なっ!!」
カッとなった影山が、月島君に掴みかかろうとする。
私はそれを見て山口君の手を離し、止めに入ろうと立ち上がった。
『影山やめて!そんなのダメだから!!』
足元をろくに確認もせず1歩踏み出した所に。
さっき使っていたタオルが無造作に置かれていて、それを踏み足を滑らせた。
『わっ?!』
ふわりと体が浮く感じがして、そこで初めて自分がステージの上にいた事を思い出す。