第19章 傷痕
澤村先輩もそれを見て、分かってる、と言うように頷いた。
澤「山口、気持ちは分かるしヤル気があるのも分かる。でも、程度が軽いうちにしっかり手当てして置いた方がいい」
山「・・・・・・はい・・・」
そう小さく返事をして、山口はギュッと唇を噛みしめていた。
菅「そう落ち込むなって、山口。ケガなんて誰にだって起きるし、それに、ほら?紡ちゃんを独り占めして手当てして貰えるからラッキー位に思えばいいじゃん?」
『菅原先輩・・・それってどういう?』
澤「スガは城戸さんがお気に入りだからなぁ、ヤキモチだヤキモチ」
菅「ちょっと大地!変なこと言うなよ!」
『変なこと?』
菅「あ、いや、変じゃないけど!・・・じゃなくて!あ、あのほら、それよりさ!紡ちゃんは大丈夫なの?」
『私?ですか?』
急に話を振られ、何のことだろうと首を傾げる。
菅「さっきの田中のスパイク受けた時の!」
澤「・・・上手いこと逃げたな」
菅「大地!!」
田中先輩の、スパイク?
あぁ、あれか!
『それなら大丈夫です。わりと私、頑丈に出来てるみたいだから』
そう言いながら腕を見ると、さっきまで赤くなっていた所が、赤いのを通り越して赤青く変わっていた。
菅「うわっ、凄い事になってるじゃん!紡ちゃんも冷やした方がいいんじゃない??」
『そんな、大丈夫ですって。逆に初心者の印みたいで恥ずかしい感じになっちゃった』
笑いながら言うと、横から大きなため息が聞こえる。
・・・月島君?
チラリと横を見ると、月島君が不機嫌にコッチを見ていた。
月「初心者の印?いいんじゃない?どうせ1人じゃ何にも出来ないんだし?」
菅「月島、そういう言い方は良くないぞ」
菅原先輩が間に入ろうとするのを、私は手で止めた。
こういう時は、まず、全部言いたいことを言わせた方がいい。
そう、思うから。
月島君の言葉を待つように、目を逸らさずにジッと見た。
月「なに?この前みたいに言い返して来ないの?・・・出来ないよねぇ?さっきのでわかったデショ?」
今の言葉で、確信した。
月島君は、私のセッター潰しの事を知っている。
でも、どうしてだろう。
月「さっきの2点。あれさえなければ勝てたかも知れないのにね」
『じゃ、やっぱり・・・』
私がそう返すと、月島君はフッと鼻で笑った。