第19章 傷痕
男子と女子が同じタオル使うとか、こ、恋人同士とかでもないのに?
モヤモヤと考えているうちに、城戸さんが顔を洗い終えてしまう。
『ゴメン、タオルくれる?』
「あ、はい、コレ」
『ありがと』
つい、流れで手渡してしまうオレは、それはそれでどうなんだと思った。
「あ、のさ?ほんとにタオル、良かったの?」
オレが聞くと、特別おかしな事じゃないよ?と返される。
「でも、だって、その・・・顔、拭いてるしさ。く、口とかも、付いてるって事、だよね?」
自分で言い出しながら、急に恥ずかしくなり顔が熱くなる。
城戸さんはオレの言葉を聞いてタオルで口元を隠したまま暫く考え込んでいたけど、やがて結論に至ったのか、みるみるうちに赤くなっていく。
『や、ヤダなぁ山口君・・・あんまりドキドキさせるようなこと言って驚かせないでよ』
え?
ドキドキ?!
そんな事を聞いて、オレも更に顔が熱くなる。
お互い、微妙な空気に飲まれ沈黙する。
『て、手当の続き、しなきゃ』
「そそ、そうだね!あはは・・・」
『じゃ、体育館戻ろうか?行こっ!』
城戸さんはそう言って、オレの左手を掴んで早足で歩き出した。
掴まれている左手が、熱い。
あんな事言われたら、オレだって変に意識しちゃうよ・・・。
城戸さんて、なんかきっと、いろいろ無意識なんだろうけど。
タオルの事を思い出し、ブンブンと頭を振りながら、小さな手に引かれるままに体育館に戻った。