第19章 傷痕
菅「マジで?」
城戸さんの言葉に、菅原先輩がオレの手を見る。
菅「山口、とりあえず冷やしてこい」
「・・・はい。すみません・・・」
もう、バレた。
城戸さんだけだったら、大丈夫だと振り切ろうと思ってたのに。
菅原先輩に言われたら、従うしかないじゃないか。
『山口君、先に手を洗って来てくれる?』
城戸さんに声を掛けられコクンと頷き、オレは体育館外の水道場に向かって歩き出した。
・・・歩き出したって言っても、オレ達がいた場所の扉を開けたら、正面なんだけどさ。
ハァー・・・と、思い切りため息を吐いた。
何やってんだよ、オレ。
普通の練習でケガしてるとか、本当、ダサい。
そんで、そんな事でグチグチいじけてるオレは、超カッコ悪いじゃん。
自分で自分を責めて、視界が滲んできた。
鼻の奥が、ツーンと痛くなる。
ホント・・・情けなくて自分が嫌になる。
はぁ。
またひとつ、ため息を吐いた。
『山口君、手は洗い終わった?』
声を掛けられ、ハッとして振り向く。
「あっ、ご、ごめん!これから洗うから」
あっ、ヤバッ。
涙が滲んでいたのを見られたくなくて、腕でゴシゴシと顔を擦った。
焦っているせいと右手の指が痛いのとで、上手く蛇口が回せない。
「あ、あれ?・・・っと、あれ?」
右手を庇い、左手で蛇口を回そうとしても、それもまた回らない。
すると横からスッと城戸さんの手が伸びてきて、オレの代わりに水道を出してくれる。
「・・・あり、がとう」
そう告げると、城戸さんは少し笑ってくれた。
水が冷たく感じて、ジンジンと痛かった場所が気持ちよく冷やされる気がする。
ふと隣を見ると、城戸さんも蛇口を回し手を洗っていた。
『よし』
そう言って水道を止めたのに、また石鹸を泡立てている。
2度洗いでもするのかな?
なんて思っていると・・・
『山口君、ちょっとゴメンね?』
言いながら城戸さんは、水をかけ流しているオレの手を持ち上げフワフワの泡で包み出した。
「き、城戸さん?!なに?!」
驚き過ぎて、手を引っ込めることも出来ずに体か硬直する。
『片方痛かったら、洗いにくいでしょ?だから、お手伝いしてあげる。はい、もう片方も出してくれる?』
サラリと言われ、不思議と左手も出してしまった。
「今更、だけど。手くらい洗えるのに」