第19章 傷痕
~山口side~
先に25点になって、ちょっとほっとした。
さっき思わずボールに飛びついた時に、手を床に打ってしまってズキズキするから。
お昼休憩になったら、水道で暫く冷やせば大丈夫かも知れないし。
・・・なんて、思ってたのに。
『山口君!』
「えっ?!オレ?!」
急に名前を呼ばれてビックリした。
『他にいないでしょ?ちょっと手を見せて!』
なんで?
まだ誰にも言ってないし、痛そうな素振りだって見せてないのに。
・・・なんで分かったんだろう。
なかなか手を出さないオレにもどかしく感じたのか、城戸さんがオレの手を掴みジッと見ている。
おとなしくしてれば、バレない、かな?
黙ってジッとしていると、城戸さんが小さく息を吐いた。
『反対の手も見せて。あ、ちょっとコレ離してね?月島君、ちょっと預かって』
「え。あ、あの?」
オレの左手からスクイズを奪い取り、むりやりツッキーに渡される。
月「適当に床におけばいいデショ・・・」
そんな事を言いながらも、しっかりと受け取るあたり、ツッキーは優しい。
・・・と、思う。
あくまでオレの意見だけど。
城戸さんはオレの両手をしばらく見比べて、パッとオレの顔を見た。
『山口君、どれくらい痛みがある?』
どれくらい・・・って、結構ズキズキはしてるけど。
でも、いまそれを言っちゃったら練習外されちゃうし、言いたくない。
だってオレだけ、1年でオレだけ青城との練習試合のメンバーから外れてるんだ。
だから練習たくさんして、早く先輩達に認めて貰いたい。
だから。
ケガしたかもなんて、バレたくないよ・・・
ちょっと痛いのくらい、ガマンして練習する事くらい出来る。
そんな気持ちを悟られたくなくて、少しだけ顔を横に向けていた。
「・・・っつ」
な、なに?!
いま何したの?!
急にピリッと痛みが走って、ビックリして手元を見る。
すると城戸さんが凄い真剣な顔で、ピンポイントで痛みがある所を押していた。
菅「紡ちゃん、山口がどうかした?」
菅原先輩が様子見がてらに、近寄ってくる。
もう、絶対バレる。
城戸さんはオレの手を持ったまま、菅原先輩に顔を向けた。
『菅原先輩、山口君さっきので手を痛めてるかも知れないんです。応急は早い方がいいと思うので、席を外してもいいですか?』