第19章 傷痕
これで、23対23。
このまま先に2点取ってしまえば・・・
そう思っていた矢先に。
田「っしゃぁぁ!」
田中先輩が超気合いの入ったレシーブで影山のサーブをカットした。
田中先輩により繋がれたボールを、菅原先輩がそのまま田中先輩に高く上げる。
田「キタキタキタキターッ!!!」
勢いに乗って、田中先輩が力強くスパイクを打った。
ケド!!
えっ!!!!
中途半端な場所にいた私が悪いのか、私の運が悪いのか、田中先輩がスパイクしたボールが私に向かって来た。
避ける訳にもいかず、私は両手を伸ばしそれを受ける。
バッシィィィッ!!
ズシリと骨まで響いて来る、強く重い勢いに負けそうになる。
重心を低めに取ったつもりも、所詮つもりのままで、私はボールの勢いに押され倒れ込む。
田「うわぁ?!お、お嬢!!」
澤「大丈夫か?!」
ドサリと倒れた私に驚き、澤村先輩が駆け寄ろうとしていた。
『ボール!!上がってる!!』
起き上がりかけ、ただそれだけを叫び、コートのメンバーの意識を、打ち上げられたボールに向ける。
ただ、問題はひとつ。
このゲーム、影山はトスを上げることは出来ない。
更に私も、たった今ボールに手を出してしまった。
『誰かフォロー・・・』
そう声をあげかけて。
私は目の前の出来事に、言葉を失った。
私が打ち上げたボール。
その行方がネットを少し超えた所で月島君によってダイレクトに打ち落とされた。
一瞬の出来事に、体が動かなくなる。
ーピッ!ー
成「大丈夫?立てる?」
いつまでも動かない私を気にかけてか、成田先輩が手を差し伸べてくれる。
『あ、はい。すみません』
差し出された手を借り立ち上がると、冷却スプレーを持った清水先輩が現れた。
清「城戸さん、手出して?」
言われるままに両腕を伸ばすと、田中先輩のボールを受けた場所が見事なまでに真っ赤になっていた。
田「お嬢~!!」
腕を見て清水先輩が顔をしかめた所へ、田中先輩が駆け寄ってきた。
『田中先輩、これしきの事で騒がないで下さい。大丈夫ですから』
澤「田中、お前はとりあえずコートに戻れ」
澤村先輩が清水先輩の手から冷却スプレーを受け取り、私の腕に吹きかける。
澤「いくら何でも、ムチャし過ぎでしょ?」
『でも、これが本当の試合なら・・・』