第19章 傷痕
澤「それはそうだけどさ、今は練習だからムリは進められないよ。それに、女の子なんだし」
『女だから、何なんですか?女だから男より劣るとか、そういう事ですか?!』
澤村先輩にそういうつもりがない事は、実際に理解している・・・と思う。
でも、そんな言葉を目の当たりにして、カッとなり反論してしまった。
私の言葉で、空気が重くなったのを感じる。
言わなくていい事を言ってしまった。
そう後悔しても既に遅い。
きっと私、いま凄く嫌な顔をしてると思う。
そう思って、思わず俯いて顔を伏せた。
日「いいじゃん、女の子でも」
いつの間にか近づいていたのか、日向君がポンッと私の肩を叩き、そう言った。
日「男とか女とか、そんなの関係なくね?だって、バレーが好きでこうやって一緒にプレー出来るんだから」
キラキラした笑顔で言われると、不思議とその場が和む気がした。
日「だからさっ、早く続きやろうよ!」
ハイタッチを求めるかの様に日向君が手を上げる。
私はフッと笑いをこぼし、その手を軽くタッチした。
『オッケー日向君。それから、ありがとう』
澤村先輩にもすみませんと謝り、さっき吐いてしまった毒跡を消した。
次のサーブは菅原先輩か。
遠目に心配そうにこちらを見ている先輩にも軽めに手を振り大丈夫ですよって笑顔を送る。
すると安心したのか、菅原先輩も小さく手を振り返した。
『皆さん時間取っちゃってゴメンなさい。あと少しだから、頑張りましょう!』
両方のメンバーに聞こえるように言うと、さすが先輩達、パッと切り替えをして顔つきが変わる。
相手チームからすれば、あと1点取ればいい。
でも、こっちのチームはその1点を守って行かなければならない。
『菅原先輩!手加減なんてしたら絶交しますよ!』
そう声をかけると、菅原先輩もニヤリと笑う。
練習だけど、本気の勝負。
日常生活にあまりない、ドキドキ感。
・・・あと1点。
ここにいる誰もが、そう思っている様に感じた。
呼吸を整え、ホイッスルが鳴るのを待つ。
胸の高鳴りが体中に響き伝わる。
ーピッ!ー
清水先輩がホイッスルを鳴らす。
澤「来るぞ!」
「「ッス!!」」
乾いた音をさせながら、菅原先輩がサーブを打った。
・・・来た!
成「クッ・・・!」
成田先輩がボールを捕らえ、私に繋いでくれる。